ステップの映画専門家レビュー一覧

ステップ

重松清の同名小説を「50回目のファーストキス」の山田孝之主演で映画化。30歳という若さで妻を亡くした健一は、仕事と両立しながら2歳半になる娘・美紀を男手一つで育てると決める。10年後、誰よりも健一たちのことを見守り続けてくれた義父が倒れる。出演は、「哭声/コクソン」の國村隼、「あなたへ」の余貴美子、「嘘八百 京町ロワイヤル」の広末涼子、「生理ちゃん」の伊藤沙莉、「泣くな赤鬼」の川栄李奈。監督は、「虹色デイズ」の飯塚健。
  • フリーライター

    須永貴子

    市井の人の小さな話なのに、台詞が偉人伝に出てくるような名言だらけ。娘の台詞も年齢の割にキザ。芸達者な役者陣による、「ここの台詞、テストに出るぞ!」的なハイライトを施した芝居も、父親が亡き妻に語りかけると、中盤から死者の声が聞こえてくる手法も、わかりやすさの極み。つまり、全体的に台詞に頼りすぎている。「家事をするのは母親の役目」「学校は平日の昼間にPTAを開くので片親が参加しづらい」といった問題は、さりげなく盛り込まれているのに。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    たまたま原作を読んでいた。人を泣かせるためにあるような小説だ。妻に死なれた男が、遺された幼い娘を懸命に育てていく。その健気な奮闘! 泣けるのは重松清の文体のせいなのか。映画はほぼ原作通りに展開するが、泣けないのはなぜなのか。キャストだって名優揃い。が、なぜか精彩を欠いている。映画は泣かせればいいというものではないが、そんな題材だったら、ちゃんと泣かせてほしい。映画は原作通りにやっても、時々失敗をする。原作を映画の文体で描き直さないといけないのだ。

  • 映画評論家

    吉田広明

    妻=母を失った父娘が様々な過程を経て、父の再婚に至るというありふれた話ではあるが、義理の父が、家族もリフォームすべき、死んだ者は柱の一本にでも残ればいい、という家族概念の更新を提起する点、新しい。ただ、失ったものの重みが感じられないので、それを超える飛躍が飛躍として感じられない恨みがある。冒頭からいないのだからしょうがないわけでは決してない、不在を在と感じさせる(妻の死後も残る癖とか仕草とか何か表現はあるだろう)のが映画の強みではないか。

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