カゾクデッサンの映画専門家レビュー一覧

カゾクデッサン

「殺人鬼を飼う女」の水橋研二主演の人間ドラマ。元ヤクザの剛太のもとに、元妻の息子・光貴が現れ、交通事故で意識が戻らない母に声をかけてほしいと頼む。剛太を快く思わない光貴の父は二度と会わないよう息子に言い聞かせるが、光貴は剛太に惹かれていく。出演は、「火口のふたり」の瀧内公美、「ミスミソウ」の大友一生。監督・脚本は、本作が長編デビューとなる今井文寛。
  • フリーライター

    須永貴子

    十五歳の光貴が、自身の出生の秘密を知るシーン。交通事故で意識が戻らない母に(育ての)父が、自分が光貴の実父ではないと語りかけている。相部屋の病室で、立ち聞きできる声量で言う? 光貴が同級生と殴り合ったあとに、仰向けに倒れて笑い合うショット。いまどきそんな仲直りある? ラストで“カゾク”4人が踊るシーン。劇中で重要な役目を果たした思い出の曲を使わないのはなぜ? 真面目に丁寧に作っていることは伝わるが、他にも疑問は多々。主演俳優の芝居は文句なし。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    デッサンというから、さらさらと軽快な映画だと思ったら、いきなり肉厚で濃い展開になっていく。恋人のバーで働く元ヤクザのやさぐれ男の許に、母親(ヤクザ男の元妻)が事故にあって意識不明だという少年が訪ねてくる。少年は男が実の父親だと思い込み、その暴力性に惹かれて、自らも暴力を重ねる。期待はさせたが、話はどんどん腰砕けになっていく。意識不明の母親が突然何もなかったみたいに意識を回復。ああ、めでたし。結局は無難にまとめたデッサンで終わっている。

  • 映画評論家

    吉田広明

    交通事故で意識不明になった母に声がけしてほしいと母の前夫を訪れる息子が、前夫を真の父ではと疑い始める。反映や鏡、不自然過ぎない程度に当てられた光によって、現実とすれ違った心理状態を表す演出に好感は持つが、冒頭で暗示される、作品を駆動する秘密が引っ張りすぎである割に大した秘密ではないため、映像的演出もスタイル偏重に見えてしまう。秘密(過去)で持続させるのでなく、曝け出された秘密でどう事態が動いてゆくか(現在)で劇を構成してほしかった。

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