アンティークの祝祭の映画専門家レビュー一覧

アンティークの祝祭

カトリーヌ・ドヌーヴと実の娘キアラ・マストロヤンニが母娘役で共演した人間ドラマ。今日が自分の最期の日だと直感したクレールは、肖像画など長年かけ蒐集したアンティークを処分しようとする。この行動を聞きつけた娘マリーが20年ぶりに帰ってくるが……。監督は、「バベルの学校」のジュリー・ベルトゥチェリ。ティファニーやバカラなどの高級アンティークが登場。主人公と半生を共にしてきたコレクションの処分を通し、その波乱万丈な人生と思いを浮かび上がらせる。
  • ライター

    石村加奈

    ベッドでまどろむ老女の、たるんだ二の腕や、かさついたかかとのヨリで、過去から現在への推移をはっきりと見せる冒頭から引き込まれて、時が経つのを忘れるほど物語に集中していた。なめらかな編集は、過去ではなく、過去の記憶にウェイトを置く作品世界にマッチしている。過剰な説明がなくても、走馬灯のように自身の人生を回顧する、主人公の心情が伝わってくる。象のからくり時計など思い出の品々もドラマチック。C・ドヌーヴは白髪姿だって素敵だ(花柄ワンピもお似合いで!)。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    数年前、どうせいつか死ぬからなぁ、と突然思い立って長年集めた趣味の収集品を処分した。なので、冒頭のドヌーヴ扮する老婦人が自分の死を悟り、アンティークのコレクションを二束三文で売りに出す行為は何となく理解できた。彼女の「最後の一日」が、記憶とも妄想とも取れる娘との“過去の断片”を軸に描かれるのだが、それぞれの視点からの解釈と紐解き方が絶妙。人は死に、想いは正確な形を残さないで消える。残った「物」だけは真実だが、それ自体も永遠ではない、という儚さ。

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