白い暴動の映画専門家レビュー一覧

白い暴動

1970年代後半イギリスにて起きた、人種差別撤廃や不平等への反抗を訴える運動ロック・アゲインスト・レイシズム(RAR)を追う社会派音楽ドキュメンタリー。ザ・クラッシュらが賛同、約10万人による世紀の大行進と音楽フェスを実現した若者たちの活動に迫る。監督は、 BBC でドキュメンタリーを手がけてきたルビカ・シャー。第70 回ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門正式出品作品。BFIロンドン映画祭 2019最優秀ドキュメンタリー賞受賞。ブロードキャスターのピーター・バラカンが字幕監修を担当した。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    「ロックフェスで政治が語られない日本」が昨年話題に。日本ではロックが政治から最も遠い。なぜか。テレビの音楽番組にアイドルとロックが並んで出る状況。テレビは完全にスポンサーと代理店の所有物。日本で最もロックは沢田研二か。さて、この映画はすごい。トム・ロビンソンやデニス・ボーヴェルなど。ロックの教科書。知るべき歴史だろう。いまや日本のロックは音楽商品で、疲弊した地方の若者の声なき声はヒップホッパーたちに代弁されている事実を思い出した。

  • フリーライター

    藤木TDC

    英国から世界発信されたパンクとレゲエのバンドが組んで反レイシズムを煽動する意外性。そこにテーマを絞ったのが正解で、70年代の記録だがメッセージは現在にフィットする。紙媒体仕事の多い私にはミニコミ紙の影響力を示す中盤も刺激的だった。一方で証言者の数が少なく運動当事者に偏った印象があるし、人種差別の根源たる英国病末期の経済状況を概括する横軸も欲しかった。当時の英国の苦境は日本製家電や自動車の輸出攻勢の影響もあったのだから日本人にとり他人事ではない。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    人間は生まれた瞬間から政治性と関わりを持たずにはいられない。本作はそのアイデンティティを認識しつつ、どのような信念の選択をしていくかという、現在も世界的に再燃している根本的な問題を音楽で切り取った映画だ。当然ルック的にもパンク・ムーブメントは魅力があるので興味深い。差別意識の凝り固まったつまらなさに対する、反差別主義に現れた、表現活動において垣根を越えミクスチャーを図った変容の面白さ。ただ登場する個々人の背景にもっと説明が欲しい。

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