はちどり(2018)の映画専門家レビュー一覧
はちどり(2018)
第69回ベルリン国際映画祭ジェネレーション14plus部門グランプリを獲得した人間ドラマ。14歳のウニは学校に馴染めずにいるが、両親には子供たちの心と向き合う余裕がない。孤独な思いを抱える彼女の前に、初めて自分の人生を気にかけてくれる大人が現れ……。キム・ボラ監督は初長編作品である本作に自身の少女時代の体験を投影させ、1990年代のソウルを舞台に思春期の少女の揺れる思いと家族との関わりを描いた。「アジアシネマ的感性」2024年8/23~9/5シモキタエキマエシネマK2にて上映
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映画評論家
小野寺系
長篇デビュー作でここまで撮れてしまうとは……! 家庭の複雑な権力構造から生み出される暴力性を描きながら、それでも寄り添わなければならない現実を巧みに描いている。女子中学生の何気ない日常にばらまかれた幸福や苦痛が、子どもの視点からリアリティを持って描写できる能力にも目を見張るが、おそらくは主人公と同じく監督自身の分身であるところの大人の視点を存在させることで、立体的かつ説得力のある世界が出来上がっていて、エドワード・ヤンを想起させられる。
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映画評論家
きさらぎ尚
セリフが少なく、終始重い空気に覆われているが、中2女子に寄り添い、脇道に逸れない展開が潔い。韓国の1994年がどんな年であったかはさておき、地域の中の、学校の中の、そして家庭の中の、ヒロインの個としての自意識の目覚めが胸に響く。女子校生に特有の憧れや友人の裏切り。また、家族同士が目を合わせない、あるいはケガを負うほどの派手なケンカをしても翌日には並んでテレビを見ている両親の不思議さ。思春期の心に映るこれらに同情せず美化もせず。ドラマに芯がある。
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映画監督、脚本家
城定秀夫
女性監督にしか撮れないであろう柔らかな雰囲気の中で少女の美しさと儚さ、愛情の残酷さを描くにとどまらず、韓国が抱える社会問題も嫌味なく絡める絶妙なバランス感覚には天賦の才を感じさせるし、スクリーンには極上映画の香りが常に漂っているのだが、空気感重視の日常スケッチや程よく抑制された芝居などには、現在のシネフィル様が好むであろう領域に収まりきっているある種の無難さも感じ、若いならもう少し闘ってもいいのではないか、なぞオッサン臭いことも言いたくなった。
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