ペトルーニャに祝福をの映画専門家レビュー一覧

ペトルーニャに祝福を

第69回ベルリン国際映画祭エキュメニカル審査員賞・ギルド映画賞に輝いた人間ドラマ。北マケドニアの小さな町。面接で不採用となったペトルーニャは、その帰りに女人禁制の伝統儀式・十字架投げに遭遇。彼女が思わず十字架を手にしたことから、騒動が起きる。北マケドニアの首都スコピエ出身、「ティトフ・ヴェレスに生まれて」(第9回東京フィルメックス特別招待作品)などを手がけてきたテオナ・ストゥルガー・ミテフスカ監督が、実話を基に、ペトルーニャの闘いをアイロニーとユーモアを交えながら描く。
  • 映画評論家

    小野寺系

    本作を見る限り、北マケドニアには男たちが裸で冷たい川に入り、十字架を奪い合う祭りがあるということで、日本の“一番福”だとか裸祭りなどと同じだなと笑ってしまった。そこに、就職活動に失敗した女子が乱入する展開を見せることで、自国の閉鎖性や女性差別を語っていく流れは面白い。だが、単に幸せになりたいだけの主人公はいいとしても、そこに彼女を利用しようとするフェミニストを登場させることで、女性を分断するような構図を作っている部分には強い疑問を感じた。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    柳眉を逆立てて怒るかどうかはともかく、古来、とりわけ女性には、女性というだけで身の回りに理不尽がいっぱい。様々な「なぜ?」を、行動をもって問いかけるヒロインvs論理的な答えができない男性たち(母親も)。根強くはびこるこの構図を、就活、祭事といった身近なことを題材に取りながら、アイロニカルにコミカルに描いたこの映画、監督のユーモア感覚がなかなかのもの。それにも増して主人公の女優◎。理屈抜きで、まず応援したくなる。世界中のペトルーニャの希望だ。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    30過ぎて実家暮らし、不美人(個人的には悪くないと思う)、太め体型(個人的にはイイと思う)な上に性格もひねくれている中年女ニートという一般的な映画ではなかなかお目にかかれないタイプのヒロイン、ペトルーニャにとって神とは何であるのか、というテーマがシンプルながら過不足ない描写で紡がれている、真っ直ぐで映画力の高い映画であり、人間として、女性としての尊厳を自らの手で取り戻し、神から解放された彼女が力強く歩いてゆく後ろ姿に祝福の拍手を送りたくなった。

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