カセットテープ・ダイアリーズの映画専門家レビュー一覧

カセットテープ・ダイアリーズ

英国のジャーナリスト、サルフラズ・マンズールの回顧録を映画化した青春音楽ドラマ。1987年、移民への偏見や父親との確執のなか、鬱屈とした日々を過ごしていたパキスタン系の高校生ジャレドは、ブルース・スプリングスティーンの音楽と衝撃的に出会う。監督は、「ベッカムに恋して」のグリンダ・チャーダ。「1917 命をかけた伝令」のディーン=チャールズ・チャップマンが主人公の幼馴染・マット役で出演している。2019年サンダンス映画祭で上映。
  • ライター

    石村加奈

    ブルース・スプリングスティーンの音楽を聴くことで、自分の世界が広がっていくジャヴェド少年の変化を、隣に住むエバンズ老人や幼なじみのマットらとの、身近な関わり方を通して見せるさりげなさに好感。特にモリッシー好きのマットとの率直な仲直りは、羨ましくなるくらい爽やかだ。ジャヴェドの父も、わからずやの頑固親父と見せかけて、妻を愛し、子供を思う大人物であることを、じんわりとわからせていく展開もいい。「ベッカムに恋して」(02)のチャーダ監督が、大いに腕を振るう。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    パキスタン移民の少年ジャヴェドはB・スプリングスティーンの曲に救われ、彼の大ファンになるが、同級生にバカにされる。私は登場人物たちと同世代だが、確かに80年代末、彼の曲はすでにおっさんが聴くものだった。それでもジャヴェドの高揚は、自分にはじめて好きなミュージシャンができた時の感覚を蘇らせた。そして“死ぬまで生きろ”というスプリングスティーンが放つリアルなメッセージは、厭世的な空気の中にいる今、直球で突き刺さった。血が通っている詩は普遍だ、とあらためて。

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