恋するけだものの映画専門家レビュー一覧

恋するけだもの

白石晃士監督が2018年に発表した短編『恋のクレイジーロード』を自ら長編化したバイオレンスコメディ。“女装男が男に声をかけ、交際を断ると殺す”という都市伝説が残る田舎町。ある日、工務店で働く宙也の前に、本当に女装男が現れ、地獄絵図へと発展してゆく。『恋のクレイジーロード』に続き、主人公・宙也役を田中俊介、女装男役を宇野祥平がそれぞれ演じる。2020年11/21より、名古屋シネマスコーレ先行公開
  • フリーライター

    須永貴子

    愛(≒肉体の接触)してくれない男を次々と殺す、女装の男。中年男性に見えるが、ジェンダーや生態は謎のまま。映画史にちょっと見当たらないユニークな連続殺人鬼を創出した時点で、本作は勝ちである。人も車も通らない見晴らしのいい四ツ辻で、“ヤバい人”を煮詰めたような女装男が、自転車男子を理不尽に殺める初登場シーンに、「ノーカントリー」のシガーを想起。「食べて、祈って、恋をして」ならぬ、彼が「恋して、殺して、旅をする」、シリアルキラー版寅さんシリーズを切望。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    こういう映画はわりと好きだ。低予算ながら破壊的なエネルギーを秘めた、硬直した映画界に仕掛けられた自爆テロのような……。が、これはそうはなっていなかった。クズが次々に出てくる。クズで凶暴だから、始末におえない。それはいい。クズは映画の重要なアイテムなのだ。が、このクズぶりをもう見飽きてしまった。不快感が先に走って、けだものにさっさと始末してもらいたいと思った。個々のキャラクターをもっと深彫りすれば、あるいは破壊力を得られたかもしれないと思った。

  • 映画評論家

    吉田広明

    女装のばけものと二重人格者の二人が、殺しが仕事兼趣味の三人のヤンキーをやっつける話。意味を問うても仕方のない話かもしれないが、なぜ女装なのか、ただ宇野祥平に女装させてそのヴィジュアルで奇を衒っているだけに見える。けだものでもばけものでも、「恋する」と言いつつそこに真情があるように見えないのも難。B級ホラーとして作られているのは分かるが、変身までもったいぶるので、見せどころであるはずのアクション、残虐描写が少なくなり、90分が長く感じる。

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