ジョーンの秘密の映画専門家レビュー一覧

ジョーンの秘密

イギリス史上、最も意外なスパイの実話を基に、ジュディ・デンチ主演で映画化。2000年5月、ロシアのKGBに核開発の機密を漏洩していた“核時代最後のスパイ”が、MI5の手によって暴かれる。しかし、その人物はジョーン・スタンリーという80代の老女であった。共演は「ムーン・ウォーカーズ」のスティーヴン・キャンベル・ムーア、「死霊院 世界で最も呪われた事件」のソフィー・クックソン、「フラワーショウ!」のトム・ヒューズ。監督は、RSCの演出家としても知られる「十二夜」のトレヴァー・ナン。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    ディケンス『二都物語』からの引用で、1940年代の英国は様々な対極性が共存していたと語る。この物語は引き裂かれた対極性の物語だ。青年たちの根底にあるのは、「人類の平和」か「国家への愛」か。この二大倫理の選択により分断を引き起こす。しかし最終的には「家族への愛」という小さくも尊い結論に至る。主人公を二人の女優が好演。特にデンチの不安定な老女の演技が若いクックソンを際立たせる。また撮影が素晴らしく画面に品格を与える。エンタメとしても十分堪能。

  • フリーライター

    藤木TDC

    J・デンチが力演する老女の青春時代をS・クックソンが可愛く演じる。戦時の秘密プロジェクトに一般女子がスパイとして関わる展開は実話ベースとはいえやたら接吻しまくったり少女マンガ的ロマンスを強調しすぎで現実離れな印象。英国の原爆開発計画「チューブ・アロイズ」の全体像も説明不足で、事前にNHKのドキュメント等で予習すると理解の助けになる。「007」ファンは老いて退職したMが二重スパイで逮捕され、若き日を回想するスピンオフと脳内変換すれば楽しめる。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    「実話に基づいた小説の映像化」で脚色があったのか、主人公を巡る人間関係が劇的な枝葉末節とともに綴られる。だが現代と過去の往来で駆け足の内容となっており、言葉が足りない部分や、辻褄が合っているのか不鮮明な箇所がある。女性の恋愛劇の面は大きく、上司との不倫関係がこじれると、彼が唐突に尊敬に値しない挙動を取るように見えるなど、感情のフィルターがかかって演出されている。本作の主人公の申し開きは、近年の暴力に満ちた世界状況からするとかなり古めかしい。

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