マイルス・デイヴィス クールの誕生の映画専門家レビュー一覧

マイルス・デイヴィス クールの誕生

“ジャズの帝王”と称されるトランペット奏者、マイルス・デイヴィスの素顔に迫るドキュメンタリー。レアなアーカイヴ映像・音源・写真に加え、家族や友人などマイルスと密接に関わった人々との対話を通じて、ジャズの歴史に革命をもたらした奇才の軌跡を追う。メガホンをとるのは、プロデューサーや監督として数々のドキュメンタリーを手がけてきたスタンリー・ネルソン。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    冒頭にクレジットは挿入されるものの、第三者による本人を真似たあの特徴的なしゃがれ声のナレーションで進行していくことに強い違和感を覚えた。こうしたトリックは対象へのリスペクト的にも観客へのモラル的にもご法度なのではないか。作品自体はマイルスのキャリアを簡潔に網羅していて、先行するドキュメンタリー作品やフィクション作品と比べても入門篇としてはよくできている。ただ、半年前からNetflixで配信されている作品であることは言っておくべきだろう。

  • ライター

    石村加奈

    “ジャズの帝王”と呼ばれたマイルスの素顔に迫ったドキュメンタリー。50年も音楽業界の最先端に君臨したマイルスについて、功績を讃えるのではなく、「大好きだ」と微笑むクインシー・ジョーンズのやさしい笑顔が素敵だ。“帝王”というよりは、ジャズという範疇に押し込められることなく、自分の音楽を自由に演奏することにこだわった、クールな人生哲学が垣間見えてくる。『カインド・オブ・ブルー』の収録曲〈フラメンコ・スケッチ〉の使いどころに、監督のマイルスへの愛を感じる。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    マイルスの豊富な本人映像、スチール、当時の演奏、多くの関係者(元恋人たち、仲間、近所の住人、邪険に扱われたA・シェップまで)のコメントを織り交ぜて、彼自身のナレーションでその生涯を振り返るのだが、当然その声は本人ではなく似た口調で俳優が行なっている。これが良い。関係者のほとんどが自然とマイルスのマネを交えながら彼について語るのも良い。愛と客観性のバランスが取れた構成が素晴らしく、長年のファンは満足するだろうし、マイルスの入門篇としても最高。

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