ラストブラックマン・イン・サンフランシスコの映画専門家レビュー一覧

ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ

2019年サンダンス映画祭で監督賞と審査員特別賞をW受賞したヒューマンドラマ。サンフランシスコで生まれ育ったジミー。祖父が建て、かつて家族と暮らしたヴィクトリアン様式の家が売りに出されることを知ったジミーは、この家に再び住みたいと願い奔走する。監督のジョー・タルボットは、幼なじみで本作の主人公を演じるジミー・フェイルズの実体験を基に自身初の長編作品として作り上げた。共演は「囚われた国家」のジョナサン・メジャース、「黒い司法 0%からの奇跡」のロブ・モーガン。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    素晴らしい気品に満ちた映像。まさかナイマンの音楽で攻めてくるとは。15世紀のメッシーナによる名画『書斎の聖ヒエロニムス』を彷彿させる“断面絵画的”な画作り。ヴィクトリアン様式の住宅空間を丁寧に時間と空間によって細かく積分し連続して映し出す。窓からの光が総てを貫通する様は、サンフランシスコの黒人の歴史をその尊厳と誇りが貫いている姿勢そのもの。その土地固有の時間と空間から紡ぎだされた物語と映像は、タイム&サイトスペシフィックな手法で現代的。

  • フリーライター

    藤木TDC

    文科系アメリカ黒人の感性を散文詩的に並べ、きわめてミニシアター的な空気を作り出す個人史映画。80年代のスパイク・リー登場に似た新しいサムシングを感じた。ギャグなのか比喩なのかローカルな符丁なのか解釈に困るシーンが多くあり、なんじゃこれ感覚に浸っているうち格差・分断の克服を問う主張と諦念が静かに染み込んでくる。客席で共有する微妙感や終映後の感想会話へのときめき。こうした映画でミニシアターの経営が健全に成立すれば日本は文化的な国なのだろうけど……。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    監督や主役俳優は初々しいはずなのにとてもこなれていて、独特なタッチはまるで70年代前後のシュールな演劇的映画を観ているようだ。黒人の老若男女の日常と孤独と家へのこだわりといった一連の絡まりが、ハル・アシュビーの「真夜中の青春」を思い出させる。ストーリーの軸は2時間を引っ張るにはいささか浅く拍子抜けもするが、撮影や編集、音楽のそれぞれが水準以上で魅力的。特にオープニングは二人の青年がスケボーで街を走っているだけゆえに編集の鮮烈さが際立つ。

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