スペシャルズ! 政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話の映画専門家レビュー一覧

スペシャルズ! 政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話

「最強のふたり」の監督コンビによる実話に基づくヒューマンドラマ。各所で見放された子供たちを受け入れている自閉症児ケア施設・正義の声は、無認可・赤字経営のため監査が入ることになり、閉鎖の危機に。さらに、重症のヴァランタンが失踪してしまい……。出演は、「ブラック・スワン」のヴァンサン・カッセル、「ゼロ・ダーク・サーティ」のレダ・カテブ。第72回カンヌ国際映画祭正式出品作品。第67回サンセバスチャン国際映画祭観客賞受賞。第45回セザール賞で作品賞を含む9部門ノミネート。
  • 映画評論家

    小野寺系

    二つの社会問題を相乗的な取り組みによって改善する。そんな実際の試みを反映した、自閉症の少年とドロップアウトした青年の交流を主軸に置いた脚本が良くできている。なかでも、少年の行動が奇妙に思えるのは、むしろ周囲の無理解にあるのではという、劇中の発言には考えさせられる。一方で、施設に対する法的な問題への指摘を、現実を無視した不当なものであるとする主張は、少し行き過ぎのようにも感じる。撮影や演技など総じて質が高い作品だけに、多角的な見方も欲しいところ。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    赤字の無認可施設と、社会からはみ出した者を社会復帰させる団体。運営者はともに実在の人物だそうで、誰もができることではない高い志とその立派な行いには頭がさがる。子どもたちの幸せよりも法律を優先するのか。これを主題に、役所側や病院スタッフの心情も盛り込みながら、施設や団体を維持すべく体当たりで奮闘する二人を軸に据えた演出は快調。以前、O・ナカシュは言っていた。「絶対に嘘はつかずに現実をありのまま描きたい」と。社会問題をユーモアでえぐるスタイルは健在だ。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    公的施設から見放された重度自閉症患者をただひたすら心と信念だけでケアする社会的にはアウトロー集団である無認可支援団体の日々はまさに戦争であり、恋もプライベートもすべて投げうった闘いの果てに望むものは金や名誉、あまつさえ感謝の言葉ですらなく、ただひとつ患者の笑顔であるという彼ら支援者を同じ人間として誇りに思うし、ラストシーケンスで滂沱の涙の海に突き落とされた自分に本作を映画として冷静に評することなどできるはずもなく、さすれば満点をつけるほかない。

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