おかえり ただいまの映画専門家レビュー一覧
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フリーライター
須永貴子
ドラマとドキュメンタリーのパートがうまく?み合っていない。被害者家族の在りし日の幸せな姿や、加害者の不幸な生い立ちを再現したドラマで観客の情感に訴えてしまっては、観客が作品のテーマに向き合う際に、不要なバイアスがかかってしまう。再現ドラマなどなくても、資料映像や関係者の証言で、過去に何があったのかを観客に伝えることはできるはず。ドラマとドキュメンタリーのおいしいとこどりをしようとした本作は、双方をなめているし、観客の想像力を見くびっている。
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脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授
山田耕大
この事件のことを書いた本を二冊ほど読んでいた。殺されてもなお何かを守ろうとする利恵さんの強さに心が揺さぶられた。いろいろなものを一つ一つ大切に積み上げてきた利恵さんを、何も積み上げてこなかった男たちが軽く思いついたような感じで残忍に殺していく。この理不尽に憤りを抑えられない。前半は幼児から事件に至るまでの利恵さんの人生をつづったドラマ。後半は母・富美子さんを追ったドキュメンタリー。ドラマは事件のその日のみに凝縮するべきではなかったのか。
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映画評論家
吉田広明
事件の重大性、被害者遺族の心痛は重々承知、しかし映画としてどうかという評価はまた別ものだ。被害者、加害者の過去を追うドラマ部分、事件までのカウントダウンで描くのでは、偶然やタイミングなど、次にどうなるか分からない現実の持つ揺らぎが捨象され、起こるべく起こったように見えてしまう。事件が起きてしまうには何か飛躍があるはずで、事実を時系列で追うだけでは見えてこないその飛躍への肉薄が見たい。ドラマ化するのはいいがドラマの弱さが映画を弱くしては元も子もない。
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