メカニカル・テレパシーの映画専門家レビュー一覧

メカニカル・テレパシー

日本芸術センター第10回映像グランプリ優秀映画賞を受賞したSFドラマ。ある大学の研究室で、草一は心を可視化する機械の開発中に事故で意識不明となる。共同研究者で妻の碧が開発を続け、草一の心の可視化を試みるなか、大学側は真崎を研究室に送り込む。出演は、「インフォ・メン 獣の笑み、ゲスの涙。」の吉田龍一、「舞姫 ディーヴァ」の白河奈々未、「ハッピーアワー」の申芳夫。監督・脚本は、本作が初長編監督作品となる五十嵐皓子。
  • 映画評論家

    北川れい子

    開発された特殊な機械によって可視化された意識不明の研究者の“心”が、まんま、その人自身の姿カタチをしているというのが、いささかイージー。これだと心は身体と全く同じということになる。或いは、本質は現出する、といったドイツの哲学者ヘーゲル理論の実践? シンプルでひっそりとした設定の中で、科学と想念というテーマを同時に描こうとする五十嵐監督の野心は素晴らしいと思うが、観ているこちら側にいまいち伝わるものがないのが残念。音の使い方は効果的。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    ハマー・プロの作品に出てきそうな妙に古めかしい機械、蔦が絡まる外壁にコンクリート打ちっぱなしの空間、キャストの低体温な演技。随所に黒沢っぽさ、高橋洋っぽさがただよう。ダメ押しとしてゴダールのポスターまで映り込んでいるときては、これはもう正しく「映画美学校の映画」であって、部外者としてはそれ以上になにも言うことがない作品と感じてしまう。その外見の奥に仄見える情動や人間観がもっと無邪気にはじけたときにこの作り手は傑作をものすと思う。期待して待つ。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    人間の心を可視化する。どうするのか。思っていることを隠さないもうひとりの自分の像を出現させる。このコンセプトにも、それを実現する機械にも、なるほどと納得させる力はない。科学、科学者、その愚かさを暴くというモティーフもとくにないようだ。もたつきながらも話は進む。待っているのは、「可視化」がどうこうというよりも、自他の願望が入りくむ関係性の迷路。五十嵐監督、タルコフスキーを意識しているだろうか。心理を異次元に展開する実験の第一歩は踏みだしたと言える。

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