燃ゆる女の肖像の映画専門家レビュー一覧
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映画・音楽ジャーナリスト
宇野維正
絵画にまつわるあれこれを題材にした映画は数あれど、伝記や実話ベースではなく、監督のオリジナル脚本でここまでの高みに到った作品は記憶にない。精巧なストリーテリング、単純に「絵画的」と呼ぶにはあまりにも独創的な画作り、徹底したディテールのこだわり、ジェンダー問題に関するシャープかつ本質的な切り口。共感度やテイストの合う合わないを超えて、今年観た映画で最も驚愕した。作品に関わったクリエイターすべての今後のキャリアが躍進するであろう一作。
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ライター
石村加奈
細密画のように緻密に、すべてが設計された映画だ。印象的なマントで、世間の荒波から身を守っていたエロイーズが、マリアンヌと恋に落ち、一糸まとわぬ姿を晒す。そのひとつひとつが絵のように美しい。規律やしきたり、観念にも支配されない、自分自身や新しい感情、そして深い愛情を知ってからのゆるぎない自信は、彼女をさらに輝かせる。しかし結末から逆算すれば、ソフィも交え、3人の娘たちが島で過ごした数日間ののどかさが切ない。見るとは認識すること。過酷な時代を思い知った。
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映像ディレクター/映画監督
佐々木誠
肖像画を描く者と描かれる者の間に生まれる独特の関係性。その肖像に「本質」は映し出されているのか。この二人の愛がいつ始まったのか、はっきりとは描かれない。すべては目に見えるものではない。本作の監督シアマと描かれる者を演じたエネル、この二人の個人的な関係、記憶が反映されているようにも感じた。劇伴がない作品だが、劇中ある曲が演奏されるシーンが2回あり、その巧みさ、美しさに感動。ラストシークエンスにその“目に見えないもの”が映し出されていて、震えた。
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