記憶の技法の映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
北川れい子
ときどき記憶にない記憶が浮かんで気を失ってしまう17歳の女子高生。親や学校はほったらかし? パスポート申請をきっかけに自分が養子であることを知る。親はどうしてその事実を事前に伝えないの? 17歳もどうしてそのいきさつを信頼している両親に素直に聞こうとしないの?そのくせこの17歳、行動力だけは人一倍、同級男子を強引に巻き込んで自分の出生の謎探し。原作漫画も、その作者についても全く知らないが、冒頭からご都合主義と思わせぶりの連続で、その真相もあざとい。
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編集者、ライター
佐野亨
池田千尋の映画は、物語を描くための背景としてまちを捉えるのではなく、まちのたたずまいそのものが物語を語り始めるところに特徴がある。新宿副都心を臨む屋上風景、博多へ向かうバスの車窓からの眺め、玄界灘を背にした北九州の天景。これらの風景が物語の節目に「韻」として挟みこまれることで、記憶のなかのおぞましい光景とかけがえのない現在の時間とが、ゆるやかに、感動的に切り結ばれていく。脚本・髙橋泉の系譜で見ても一貫したモティーフが読み取れて興味深い。
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詩人、映画監督
福間健二
髙橋泉脚本で池田監督。期待したのだが、こういうことでしたと最後まで持っていくのが精一杯という感じで終わった。いま、映画は回想の扱いがむずかしい。記憶の回復、こうなるのだろうか。もともとかなり無理な話。ヒロインの石井杏奈は表情がその無理に負けている。それに対して、高校生に見えない栗原吾郎はリアリティーのなさをこえて引きつけるものがある。池田監督、またしても性関係のない若い男女を一室においた。こうであっていいという持論があるなら聞きたい気がする。
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