KCIA 南山(ナムサン)の部長たちの映画専門家レビュー一覧

KCIA 南山(ナムサン)の部長たち

1979年10月26日に起きた韓国の朴正煕大統領暗殺事件を基にした実録サスペンス。大統領直属機関として権力を握るKCIA(中央情報部)部長キム・ジェギュが大統領を射殺。事件前、大統領の命令でキムは腐敗を告発した元部長に接触。そこから彼の運命が狂いだす。「インサイダーズ/内部者たち」のウ・ミンホ監督とイ・ビョンホンが再びタッグを組み、ベストセラーノンフィクションを原作に歴史の闇に迫る。共演は、「工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男」のイ・ソンミン、「哭声/コクソン」のクァク・ドウォンほか。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    実際の大統領暗殺事件を基にしている作品。「はちどり」の「聖水大橋崩落事故(1994)」や「国家が破産する日」の「IMF介入(1997)」など、国民の誰もが記憶に刻まれた事件。映像体験と個人体験との関数における変数は、韓国民なら化学作用を引き起こすはずだ。いまでも大統領の辞職は、逮捕や不名誉な失脚を引き起こす。これは首長が命懸けで職務を全うし、責任を負わねばならないという気質がそうさせるのか。ハリウッド的演出はなく、史実を義勇的に描写する。

  • フリーライター

    藤木TDC

    イ・ビョンホンが眼鏡をかけ市川雷蔵風に硬質演技する渋さに酔えれば高評価になろうが、私はそこまで彼のファンじゃない。朴正煕は74年に夫人・陸英修を亡くして以後、政策に意見する人物を失って独善暴走する。その経緯や元部長によるコリアゲートの発端、政敵・金泳三を支持する米国の工作など背景説明が希薄なためKCIA部長の暗殺動機が個人の対立感情に矮小化されて見え、政治サスペンスの力感を欠く。自国の元首暗殺を根拠の薄い劇画調にするわけにもいかなかったか。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    最近の韓国映画では、社会派の作品を立て板に水のような語り口で撮るのが流行なのだろうか。テンポ的にはアダム・マッケイ作品のようにスピーディーで、振り落とされそうになる。非常に強面な作品で、でもそこが本作の振り切った魅力だ。抽象的ともいえるセリフと、緊密に張り詰めたドラマは観客に集中力と緊張を強いるが、政治劇としての渋さと強度にしびれる。その硬質さの中で、感情的な芝居はほとんどしないのに、揺れ動く心理を表現したイ・ビョンホンの演技力に驚嘆。

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