野球少女の映画専門家レビュー一覧

野球少女

ドラマ『梨泰院クラス』のイ・ジュヨンがプロを目指しガラスの天井に挑む天才野球少女を演じたスポーツドラマ。速球とボールの回転力が武器のチュ・スインだったが、女子であることを理由にプロテストを受けられず、周囲は反対。それでも決して諦めず……。イ・ジュヨンは撮影前に約40日間訓練を重ね、劇中の全ての野球のシーンを自らこなした。スインを支えるコーチをドラマ『秘密の森』のイ・ジュニョクが、スインの母を「無垢なる証人」のヨム・ヘランが演じる。監督は、本作が初長編のチェ・ユンテ。
  • 映画評論家

    小野寺系

    野球の女子選手の活躍を扱った作品に「野球狂の詩」や「MAJOR 2nd」があるが、それらが強調するアイドル的演出や性的な目線が、本作には全然ないというのが進歩的。厳しい現実のなかで闘う主人公だけに、落ち込んだ場面が多いのはつらいが、それでも性差を越えた野球選手としての気概やプライドを見せる場面は心を熱くさせる。スポ根作品としてはシンプルなつくりで新味はそれほどないものの、数少ないチャンスをものにしようとする投球勝負には手に汗握ることになるだろう。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    まず性別を突き抜けて、夢の形を主題にした着想が良い。ヒロインは最初からプロ野球選手になる考えで、その夢の形はぶれない。その決意と潔さは実に爽快。演じるイ・ジュヨンの動作も主題に説得力をもたらす。母親と父親、コーチ、アイドルを目指す親友。これらの人物の個性も物語に調和と均衡を醸成する。スピード感とシャープさを終始失わない編集も評価したい。スポーツ映画でありつつ、社会性にも目配りがされ、架空の人物水原勇気の時代とは違い、ドラマが現実的だ。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    韓国では(日本も)女性がプロ野球選手になれないというルールは存在しないとはいえ、実力至上の世界において腕力で劣る女性がなるのは難しい、という部分の公平性は提示したうえで、なお根強く残るジェンダー問題を扱ったスポーツ映画なのだが、社会派要素が説教臭くなっていないので青春娯楽映画としても素直に楽しむことができるし、音楽やカッティングなど少し薄味に感じる演出も少女の真っすぐな気持ちを丁寧に掬い上げており、変化球を封じて完投した監督の剛腕ぶりが窺える。

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