かくも長き道のりの映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
北川れい子
大仰なタイトルと反比例するような、上げ底、スカスカの脚本にガックリ。おっとごめんなさい。伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞の、審査員奨励賞受賞作を、受賞者本人が監督しているのだが、“かくも”どころか、“長き”も“道のり”も一切描かれず、ドラマの大役を仕留めたらしい主人公が、ホンの数日間、故郷に戻っての話。で彼女には父娘ほどの年の離れた愛人だか、恩人だかがいて。主人公を含め、どの人物もポーズだけでウサン臭い。ロケ地の美しい風景だけが救い……。
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編集者、ライター
佐野亨
シナリオ賞を受賞した脚本を自身で映画化した屋良朝建監督。思い入れの深さは疑いようがないが、こうして映像になったものを観るかぎり、すでに出来上がった「物語」への愛着に縛られてしまい、映画の話法をもって「物語る」とはどういうことなのかが問い直されていないと感じる。ジャズもダンスもすべてが消化不良。組み立てられた物語を愚直に演じた結果、身体性を発揮できずに終わった役者たちのなかで、唯一、デビット伊東だけが持ち前の野放図さを発揮して好演している。
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詩人、映画監督
福間健二
駆け出し女優のヒロインは話し方に個性がある。演じる北村優衣の地が出ているのか。その存在感や演技の質とキャラクターの重なりが一番の取柄かもしれない。故郷の町にいる、何者なのかよくわからない、デビット伊東演じる二十五歳年上の男との関係がどうなるかという話。こんな例はあまりないと思うが、結局、この設定で男たちのすることは、いかにもありそうな自滅と後退にしかならない。屋良監督、この筋に体験的な裏打ちがあったのか。ジャズの名曲、使ったというだけの響き方。
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