サンドラの小さな家の映画専門家レビュー一覧

サンドラの小さな家

「マンマ・ミーア!」のフィリダ・ロイド監督による人間ドラマ。サンドラは虐待する夫のもとから幼い子供二人を連れて逃げ出した。住まいが見つからずホテル暮らしから抜け出せない中、自分で家を建てることを決心し、隣人たちと助け合いながら奮闘していく。主演・脚本は、舞台を中心に活動してきたクレア・ダン。シングルマザーの親友の話を受け脚本を執筆、当時出演していた舞台の演出を手がけていたロイド監督に脚本を送ったのが本作製作のきっかけとなった。共演は「ベロニカとの記憶」のハリエット・ウォルター、ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のコンリース・ヒルほか。
  • 映画評論家

    小野寺系

    家庭内暴力から逃れられた女性と娘たち。その新居をDIYで建てていく過程が、彼女たちの傷ついた心の回復とシングルマザーの自立をそのまま象徴していて、視覚的に秀逸な設定だと感じられる。製作規模は小さいが、だからこそ身近なリアリティがあり、企画、脚本、主演を務めたクレア・ダンの情熱がひしひしと伝わってくる。全ての女性へのエールを劇中曲で表現する演出も心を熱くさせるが、シーンに上手く?み合ってない箇所があり、選曲や編集など、細部では少々荒い点が見られた。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    映画冒頭の、母が父からDVを受ける様子を隠れた場所から目撃した娘と同じ恐怖心が、見ている間中ずっと気持ちを支配する。そうした中で描かれる主人公の恐怖心や怒りや無力感、羞恥心は事態に立ち向かうシングルマザーのリアルな苦しみそのもの。そこから見える個々人のニーズに寄り添えない福祉や社会サービスは痛烈なメッセージ。その一方、物語の軸をなす皆が集まって助け合うアイルランドの「メハル」の精神に救いも。世界中の大勢のサンドラと娘たちの幸せを願う気持ち沸々。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    タイトルとポスタービジュアルからは想像できない壮絶な物語であり、家庭内暴力、シビアな親権裁判、劣悪な住宅事情など、シングルマザーが抱える苦難のフルコースで、時に目を覆いたくなるような暴力描写に加え、終盤のある事件に至っては意地悪も大概にしてほしいと観ているこっちが創造主に恨みごとを言いたくなってくるのだが、それらから逃げずに立ち向かうヒロインの姿と家作りを無償で手伝う仲間たちの温かさ、そしてすべての支えになっている子どもたちの笑顔に心打たれた。

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