プロミシング・ヤング・ウーマンの映画専門家レビュー一覧

プロミシング・ヤング・ウーマン

「未来を花束にして」のキャリー・マリガン主演によるワイルドで型破りな復讐ドラマ。ある不可解な事件によって不意にその有望な前途を奪われてしまったキャシー。平凡な生活を送っているかに見える彼女だったが、誰も知らない“もうひとつの顔”を持っていた。共演は「エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ」の監督を務めたボー・バーナム。監督・脚本は、本作で長編デビューを果たした英国人女優のエメラルド・フェネル。
  • 映画評論家

    小野寺系

    コメディーでありサスペンスでもある不思議な味わいの映画だが、それゆえ先が読めない展開はフレッシュで鮮烈だ。最近になって抑圧される女性の象徴となっているブリトニー・スピアーズのイメージをも背負った大胆不敵な主人公像と、演じるキャリー・マリガンの肝の据わり方が素晴らしい。女性の人権問題を過激に描いた新感覚の娯楽作として、後に確立されるだろうジャンルの先達となることも予想される傑作。それにしても長編監督デビュー作で、ものすごい金鉱を掘り出したものだ。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    登場人物に聖人君子も極悪人もいない。未来を約束された普通の若い女性が、不条理極まりない状況に立ち向かう日々を、練られた脚本によって執念に集約して描き切ったE・フェネルの技量を評価したい。ガーリー映画風のカラフルさで見せるビジュアル・センス、またロマコメ風の軽妙な演出も併せて。ヒロインの名前をギリシャ神話の予言能力を授かった王女と同じカサンドラとし、現代のカサンドラに〈Angel of the morning〉をBGMに、スマホで目的の遂行を予告させるとは。うまい。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    世のクソ男たちへ鉄槌を! という復讐モノ、あるいはサイコスリラーとしては満点をあげたくなる出来なのだが、話はそう単純ではなく、中盤以降はかなり痛烈なフェミニズム的主張が物語を覆ってゆく構成で、この社会性を帯びたテーマは、自ら仕掛けた巧妙な罠で捕獲した獲物に罰を与えてゆく過剰な行動を粒立った音楽で装飾している序盤の娯楽性とはいささか齟齬が生じているものの、かようなバランスの悪さもまたこの映画の不気味な魅力であるし、とにもかくにも物語が滅法面白い。

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