レッド・スネイクの映画専門家レビュー一覧
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映画・音楽ジャーナリスト
宇野維正
シャルリー・エブド事件については、その後に起こった世界中でのリアクションも含めて、(おそらくは)マジョリティとは異なる見解をずっと抱いてきた。同誌の寄稿者であった監督は、あの事件が本作を撮るきっかけになったという(劇中にニュース映像も出てくる)。可能な限り偏見を排して臨んだが、ISという絶対的な悪を包囲するように、正論をたたみかけていくばかりの展開に映画的奥行きはない。ヨーロッパ側ではなく、迫害下にあるクルド人側に焦点を当てた点は評価できるが。
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ライター
石村加奈
強烈な記憶とは、五感に宿り、いま、ひいては未来に作用する。ザラの記憶は、目の前で父を殺し、自分を奴隷として買ったIS兵士の体臭。後に兵士として、男と再会した時、彼女は仲間に「戦争のせいなら、なぜ私は恥じるの?」と問う(その様子を見守るカメラワークがやさしい)。この難役をジャーナリストのディラン・グウィンがまっすぐに体現する。遂に戦地で弟を見つけた時、ザラは母のよく口ずさんでいた歌を歌い、弟を正気に戻す。彼の記憶が幸せなものでよかったと心から思う。
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映像ディレクター/映画監督
佐々木誠
監督のC・フレストは以前シャルリー・エブド誌の記者で、6年前にISがその編集部を襲撃、12名を殺害した事件が制作のきっかけになったということだが、本作は彼女の個人的な怒りと恐怖、ジャーナリストとしての俯瞰の視点がうまく融合されている。ISに家族を殺され奴隷として売られたヤジディ教徒の女性、自ら志願して連合軍の女性特殊部隊に参加するフランス人の女性二人、其々の主観と背景を重ねて描くことで、この生き地獄が日常の延長線上にあることをより明確にしている。
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