王の願い ハングルの始まりの映画専門家レビュー一覧

王の願い ハングルの始まり

「パラサイト 半地下の家族」のソン・ガンホが、朝鮮第4代国王・世宗に扮した歴史劇。一部の上流階級層だけが特権として中国の漢字を学び使用している状況をもどかしく思う世宗は、庶民でも容易に学べて書くことができる朝鮮独自の文字を作ることを決意する。共演は「天命の城」のパク・ヘイル、本作が遺作となった「母なる証明」のチョン・ミソン。
  • 映画評論家

    小野寺系

    ハングル文字形成時における宗教対立などの背景や、発音を念頭に置いた文字組成の優れた合理性が理解できるという意味では勉強になる一作。とはいえ、権力者への自制をうったえながらも、基本的に自国文化の礼賛に終始する内容であることも事実で、その偉大さを強調したり重厚に演出されるシーンには、さすがに鼻白んでしまうし、理性的な明君として描かれる、ソン・ガンホ演じる王のキャラクターも、いまいち魅力に欠けていると感じられる。国内の保守層は喜ぶのかもしれないが……。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    主人公の世宗王がどこまで実像に忠実に描かれているかは、韓国の歴史に明るくないので定かではないが、ハングルがいかにして誕生したかが丁寧、かつ具体的に描写されているので勉強になる。知識階級とは違い、話し言葉でしかコミュニケーションの術を持たなかった当時の民衆に向け表音文字が誕生する過程の、特に発声器官の形を図形化して文字を決めてゆく様に、この文字の仕組みが緻密であり合理的であると評されている所以をみる。背景となる仏教と儒教、政治と文化の対立も興味深い。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    「本作は歴史の一説を基にしたフィクションです」という言い訳じみた但し書きから始まるところからして微妙に胡散臭い歴史モノで、民衆に学問を広めるためハングル文字を作った王様万歳の物語は日本人の自分の感覚からすると漢字という豊かな文化を排除した歴史でもあるという側面が気になり素直に美談とは受け取れないし、表音の原理などの学術描写が変に難解であるうえ、文字を欲する民衆側を一切描写せず、物語をすべて王朝内で進める構造も映画をいっそう窮屈なものにしている。

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