Summer of 85の映画専門家レビュー一覧

Summer of 85

「グレース・オブ・ゴッド 告発の時」のフランソワ・オゾン監督が青春小説『おれの墓で踊れ』を映画化、初恋に突き動かされる少年のひと夏を綴るラブストーリー。運命的に出会ったアレックスとダヴィドは急速に惹かれ合うが、幸せな日々は長くは続かず……。オーディションで選ばれた新鋭フェリックス・ルフェーヴルとバンジャマン・ヴォワザンが演じる少年同士の瑞々しい刹那の恋を、フィルムにより撮影した。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    観ていて気恥ずかしくなるような古臭い文学観が開陳される冒頭部には不安を覚えるも、次第にダサさと表裏一体の物語や衣裳の瑞々しさに惹きこまれる。最初期の「サマードレス」を想起させつつもセルフパロディの要素とは無縁の仕上がりとなっているのは、原作への変わらぬ愛ゆえか。同時代性や現代性に一切目配せすることなく自らの偏愛する80年代の世界観をひたすら追求する純粋さには、ところどころ苦笑しつつも感服。はじめてロッド・スチュワートの楽曲を少しだけ好きになった。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    センセーショナルな表現も品よく抑えられ描かれる親友と恋人どちらともえいないあわいの関係性は、とても雰囲気良く北フランスの夏空と海のなかを心地よく吹き抜けて、爽やかに切ない。「墓の上で踊る」秘密、つまりは私とあなたの関係は、物語のように書くことによってしか言い表すことが出来ないと本作は語る。創作論そのものにも思えるし、安易なカテゴライズを拒む批評的な態度にはとても共感する。だが、肝心の「書く」ことそのものについては深掘りされているとは言い難い。

  • 文筆業

    八幡橙

    ひと夏の、わずか6週間に凝縮された少年の迸る思い――走り出す恋の昂揚、愛する人と心身が溶け合う恍惚、相手を独占しきれぬ不安と嫉妬、やがて訪れる底なしの絶望――。「ラ・ブーム」や「マイ・プライベート・アイダホ」へのオマージュとともに、フランソワ・オゾンが17歳から心酔していた原作を映画化。ロッド・スチュワートの〈Sailing〉に乗せて10代の鬱屈した思いを爆発させる墓の上の舞いの美しさよ! 監督と同じ67年生まれにはたまらない80年代の空気に★を1プラス。

1 - 3件表示/全3件