復讐者たちの映画専門家レビュー一覧

復讐者たち

知られざる史実を基に、ユダヤ人たちによる驚愕の復讐計画を描くサスペンス。敗戦直後のドイツ。ホロコーストを生き延びたマックスは、ナチス残党を処刑するユダヤ旅団に加わる。そして、より過激な組織に参加し、ドイツ人600万人を標的とした計画を知る。出演は、「名もなき生涯」のアウグスト・ディール、「ブレードランナー 2049」のシルヴィア・フークス。監督・脚本は、「ザ・ゴーレム」のドロン・パズとヨアヴ・パズ。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    終戦直後のドイツでの、ユダヤ人組織ナカム(ヘブライ語で「復讐」の意)による市民大量虐殺計画という際どいテーマを扱った作品。ナカムに関しては近年になって公にされた情報も多く、監督がイスラエル人のパズ兄弟ということも含め、作中の出来事がどれだけ裏付けのある事実に即しているのかと邪推せずにはいられない。特に冒頭と最後のモノローグにおける扇情は、本篇からも浮いていて、何十年もイスラエルがパレスチナ人に対して行ってきたことを考えると、とても居心地が悪い。

  • ライター

    石村加奈

    敗戦後のドイツで水道施設が復興し、うまそうに水を飲むドイツ人の傍らには、ナチスに殺された家族を思い、目に涙を浮かべて「目には目を」と復讐を誓うユダヤ人たちが居た。生き延びた彼らの抱えた、深い哀しみは、彼らを新たな人生に向かわせず、過激な復讐計画へと駆り立てる。絶望の中「歴史を変えよう」という大義に、希望を見いだす彼らの、実話に基づいた心情を、様々な水の描写や死神のエピソードなどで、切実な物語へと昇華されている。複雑な構成にも、監督の思いを感じた。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    冒頭のモノローグ、「家族が殺されたとしたら。想像してみてくれ……」がゆっくり突き刺さる。我々はその言葉に導かれ、主人公マックスに憑依し物語を体験せざるを得ない。ホロコーストを生き抜き、戦後を迎えたユダヤ人たちの怒りと悲しみは消えることなく、より深くなっていく。その苦しみから逃れるための復讐への渇望。そこにもまた新たな確執が生まれる。最終的に最大の復讐を行なったマックス。その選択の正否に対して“死ぬまで”葛藤するクライマックスが秀逸。

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