皮膚を売った男の映画専門家レビュー一覧

皮膚を売った男

第93回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネート、主演のヤヤ・マへイニが第77回ヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ部門男優賞を受賞した人間ドラマ。シリア難民のサムは、ある芸術家から、背中にタトゥーを入れて彼自身がアート作品になることを提案される。監督は、「Beauty and the Dogs」がカンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され音響賞を受賞したカウテール・ベン・ハニア。芸術家ヴィム・デルポア氏のタトゥー作品『TIM』から着想を得ている。第33回東京国際映画祭TOKYOプレミア2020部門上映作品。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    展開が読めないので、引き込まれた。主人公の男が、情けなく恋愛を引きずっているところが良かった。見世物にされ、周りから色々言われる男の心情が突き刺さってくる。男は、どうするのか?だんだんアナーキーになっていくのが、痛快だった。ラストが気にくわない。ハッピーエンドはないんじゃないか。無理やりだと思う。実際の話があったらしいのだが、その人はどうしたんだろうか。背中のタトゥーは死後、アート作品として背中から?がされて展示されるのか。

  • 文筆家/女優

    睡蓮みどり

    不当に逮捕され逃れてきたシリア難民が自らアート作品になることで自由を手にしようとする壮大な仕掛けに引き込まれる。政治的テーマと人権問題に踏み込む社会派。緊張感とユーモアのバランスが素晴らしく魅了されていった。キャスティングがとにかくいい。家柄の違いから離ればなれになってしまうメインの恋人二人も良いが、この映画に影響を与えたアーティストのヴィム・デルボアが保険業者役で一瞬だったけどすごくいい味だった。モニカ・ベルッチのキャラクターも絶妙で最高。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    冒頭、ホワイトキューブと鏡の使い方に、一抹の不安とともに淡い期待を抱いたのは正直に告白しておく。だが、ビザがとれたと友人に告げて喜ぶシーンで、いきなりカメラが二人の周りをゆっくりと360度回りはじめたり、サムとアビールが電話するくだりでスプリットスクリーンが駆使されたりと、結局すべてがその程度のこけおどし。空虚な記号の戯れのアートワールドとリアルで深刻なシリア難民を対比させて組み合わせるとか、そもそもの発想に作り手の想像力の幼さが露呈している。

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