BELUSHI ベルーシの映画専門家レビュー一覧

BELUSHI ベルーシ

「ブルース・ブラザース」などで活躍しながらも、33歳で亡くなった俳優ジョン・ベルーシの生涯を追ったドキュメンタリー。初公開となる本人の音声や妻ジュディスへのラブレター、関係者へのインタビューを交え、稀代のエンターテイナーの栄光と苦悩に迫る。証言者として、親友ダン・エイクロイド、弟ジェームズ・ベルーシ、映画監督ジョン・ランディスなどが出演。監督は「ビリー・アイリッシュ:世界は少しぼやけている」のR・J・カトラー。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    常に生き急ぐような危うさと表裏一体の感覚は、決してべルーシの笑いから切り離すことはできない。その意味で、単に最盛期の活動を賞賛するのではなく、移民の子としての疎外感を抱えつつ笑いへと向かった幼少期から、ドラッグの濫用により破綻していく、『ハリウッド・バビロン』を体現する晩年までの姿を虚飾を交えず淡々と追う構成は正しいし、だからこそ最後に添えられた歌唱場面がひときわ胸を打つ。彼を知らない世代でも、とりわけ『ボージャック・ホースマン』ファンは必見。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    べルーシの目まぐるしい人生を表すように、さまざまな声や音楽が矢継ぎ早に入り乱れる編集が楽しい。人を笑わすことで自己を見出し、天狗になり、他人に嫉妬もし、女性蔑視もひどく、ドラッグに溺れた天才コメディアン。唯一無二でありながらもよく聞くスターの悲惨な末路にも思えるのは、べルーシの登場がコメディをどう変えたのかへの踏み込みが今一歩足りなかったからかもしれない。喧騒から一転、無敵だったべルーシの死後を語る最後の15分の静寂が一層の悲しみを誘う。

  • 文筆業

    八幡橙

    『SNL』での侍キャラや「ブルース・ブラザース」誕生の瞬間など、懐かしい映像や音楽を盛り込み綴られる、閃光と陰翳に彩られた、わずか33年の男の人生。ダン・エイクロイドとの友情、チェビー・チェイスへの嫉妬、成功と共に加速する尊大さと薬物への依存……知られざる側面が抉り出される中、特に胸を打つのは、妻に宛てた手紙に並ぶ繊細かつ率直な言葉の数々だ。孤独の淵で薬に頼ってでも逃げたかったのは、誰より厳しい自身の目、からだったのか。笑いの底の生真面目さが切ない。

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