メイド・イン・バングラデシュの映画専門家レビュー一覧

メイド・イン・バングラデシュ

10代半ばからバングラデシュの労働闘争に関わってきたダリヤ・アクター・ドリの実話に基づくドラマ。首都ダッカの衣料品工場で働くシムは、過酷な労働環境に耐え兼ね、労働者権利団体のナシマ・アパとの出会いを機に、労働組合結成に向け、奔走するが……。出演はバングラデッシュで活躍するリキタ・ナンディニ・シム。監督は「Meherjaan」、「Under Construction」が各国の映画祭で高く評価されたバングラデシュ出身のルバイヤット・ホセイン。これが日本初公開作となる。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    男たちがとことん情けない。だらしなくて偉そうで最低だ。女たちがムカついて、でもうまくいかなくてイライラしているのがよく分かる。追い詰められて、とっさにアナーキーになる主人公にシビれる。捨て身の彼女の追い込み方がハンパなかった。やった!ってなった。バングラデシュの裏路地の汚いところがちゃんと映っている。野良犬が暇そうにたむろっていたり、子どもらが地面に座り込んで遊んでいたり、縫製工場の湿度が高くて暑くてウンザリする感じとかも良かった。

  • 文筆家/女優

    唾蓮みどり

    いくつもの層になって困難が現れ、女性たちにのしかかる。労働環境の問題をメインには描くものの、家庭環境における問題もまた、余すことなく描いている。とはいえ、ほんの一部分に過ぎないのだろう。女性の地位はとにかく低い。仕事場でも家でも男たちは大声を出し、抑圧しようとする。女性たちはともに手を取り合うしかないが、この過酷な環境がそれさえも容易にさせない。これが、物語のキャラクターなのだとしても、主人公シムのパワフルさがいま必要なのだと実感させられる。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    エイゼンシュテインの「ストライキ」(25)はストライキを描いた映画ではなく、ストライキを敢行するための道具と手段を提供する映画だった。カット割りがむしろアメリカンなため見えにくいが、本作はまさにその系譜に連なり、本来なら「ユニオン」と題されてしかるべき作品だろう。観客はシムとともに労働者にも女性にも人権があることを学び、搾取の実態について知り、組合の立ち上げ方を習得していく。そして、スマホの使い方と数々の障害にも負けない力強さをものにするのだ。

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