ZAPPAの映画専門家レビュー一覧

ZAPPA

アメリカの偉大なアーティスト、作曲家、編曲家、ギタリスト、ロック・ミュージシャンのフランク・ザッパの革新的人生に迫る遺族公認の初ドキュメンタリー映画。俳優であり映画監督のアレックス・ウィンターが未亡人ゲイルの協力を得て、フランクの内面に深く迫る。ウィンターはザッパ家の地下倉庫に眠る何千時間もの未公開インタビュー映像、コンサートやスタジオセッションでの未発表音源、未完成プロジェクト資料にアクセスを許された。また、ザッパのバンド・メンバーや家族、未亡人ゲイルからフランクの人間的な魅力についての証言を引き出した。フランクが音楽に触れた10代の頃に始まり、政治的な活動に積極的に関わる1980年代以降に至るまで、52年の生涯を詳細に描き出していく。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    意外にも初だというドキュメンタリー。それだけでもあまりにも多岐にわたる音楽キャリアに的を絞るのではなく、レアな映像作品から政治活動まで、膨大な未公開のアーカイブ資料を駆使しながら人間ザッパの本質にこそ迫ろうとするスタンスが見事に奏功している。有名なPMRCとの対立に加え、不意にタイムリーな意味を帯びてしまった冒頭と末尾で強調されるビロード革命後のチェコでの活動に至るまで、一見バラバラな彼の活動が全て自由をめぐるものであったことが感得できる傑作だ。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    猥雑で政治的で誠実で自由で生真面目で現代的でクラシカルで等々、矛盾する事柄を同時に体現し、対立するような概念も両方飲み込むフランク・ザッパの多様な嗜好や思想を追って、その生き様を真正面から堂々と語り尽くそうと試みた力作。なによりも本作を見た誰もがザッパを好きになるのではと思わされるほど、ザッパ本人の人間的魅力を彼の作り出す音楽と同等かそれ以上に描き出すことに成功しているように思う。特に晩年の白髪混じりで穏やかに佇むザッパの姿は実に感動的。

  • 文筆業

    八幡橙

    奇人か、才人か。捉えどころのない伝説の人の隠された顔に「ビルとテッド」のビルことアレックス・ウィンターが肉迫。自宅地下に眠る膨大な資料をじっくり紐解き、クラシックの作曲家、映画や絵画に通じる芸術家、晩年情熱を傾けた検閲と闘う運動家、など多彩な一面を深く掘り起こす。多作で知られたが、その脳内には絶えず洪水のように音楽や印象が湧き上がり、それを忠実に具現化することを最大の使命とし、素面のまま己を研ぎ澄まし挑み続けてきた生涯だったと知り、圧倒された。

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