バニシング 未解決事件の映画専門家レビュー一覧
バニシング 未解決事件
「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」のオルガ・キュリレンコ、「スティール・レイン」のユ・ヨンソク共演によるサスペンス。仕事のため韓国を訪れた法医学者アリスは、刑事ジンホからある殺人事件の協力を求められるが、背後に臓器売買が関わっていることを知る。監督は「譜めくりの女」のドゥニ・デルクール。
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米文学・文化研究
冨塚亮平
「殺人の追憶」を参考にしたという警察の描写は、韓国映画おきまりの無能な警察像に、いかにも外国人として韓国ロケで映画を撮る監督が考えそうな捻りを加えたものだろうが、「有害な男性性」を回避すればOKと言わんばかりの主人公の人物造型は安直。不必要に物語を水増しせず、伏線を生かしつつ短い時間のなかで事件解決と主人公二人の関係の進展を描いている点は悪くないが、あまりにもサクサクと捜査が進むせいで、最も肝心な遺体をめぐるサスペンスはほぼ機能していない。
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日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰
降矢聡
事件の真相に近づくストーリーテリングとしての妙や、決定的なことが起こる際のサスペンス描写、そして巨悪組織による臓器売買と移植といった社会的かつ倫理的なテーマなどが、どれも中途半端な出来になってしまっているという印象。刑事役のユ・ヨンソクと法医学者役のオルガ・キュリレンコの国籍も性別も職業も違うコンビも多少の新鮮味はありつつ、新しいコンビ像を打ち立てるまではいかず、コンビの見せ場である銃撃と手術が同時進行するクライマックスの盛り上がらなさも残念。
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文筆業
八幡橙
韓国映画の力を世界に、と国境を越え実現したグローバルプロジェクト。それはわかるが、スリルを重要視したというフランス人監督の狙いや作品の目指すところは最後まで見えず、映画自体が未解決。参考にしたというナ・ホンジンやポン・ジュノに通じる妙味も残念ながら感じ取れなかった(リドリー・スコットへのオマージュと思しき片鱗はいくつか!?)。原作未読ながら、やはり一番の問題は脚本の弱さか。主要なキャラたちの顔や人物像が終始曖昧な点が何より大きな瑕疵に思えた。
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