ポーランドへ行った子どもたちの映画専門家レビュー一覧

ポーランドへ行った子どもたち

1950年代、秘密裏にポーランドへ強制移送された北朝鮮の戦災孤児たちのドキュメンタリー。監督のチュ・サンミは脱北経験者のイ・サンとともにポーランドを訪れ、孤児たちの悲痛な分断の記憶を巡り、彼らを我が子のように受け入れた教師たちの記録を知る。監督は、「気まぐれな唇」「誰にでも秘密がある」などに出演したチュ・サンミ。2018年釜山国際映画祭上映。2018年金大中ノーベル平和映画賞、2019年春川映画祭審査委員特別賞、ソウル国際サラン映画祭基督映画人賞受賞。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    これまで光を当てられてこなかった戦災孤児たちの記録を取り上げたこと自体は間違いなく貴重だが、苦しみに寄り添う母としての自己を前面に押し出すような構成は、悪い意味で河瀨直美を思わせる自意識の強さが鼻につく。また、「傷の連帯」を謳いつつ、脱北者であるイ・ソンが共有したがらない過去の経験について執拗に問いかけることは、二次加害とまでは言えずとも、彼女の傷の固有性を無視して、質の異なる苦しみを擬似家族的な関係性に回収しようとしているようにしか見えず。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    ポーランドへ強制移送された戦災孤児たちのことを知るため、現地に赴く監督兼主演のチュ・サンミは常にノートを手に持ち、人々の話をメモに取る。しかし、そのノートに書かれた生の字は、なぜか小綺麗なアニメーションへと変換され、映画の章立てを構成する単なる形式上のアイデアとして使われる。戦災孤児たちの過去に触れ、なにを感じて、どのように思考し、どういった筆跡でノートに記したのか。そういった生々しさを捨て、本作は上手な画と構成を作ることに注力しているようだ。

  • 文筆業

    八幡橙

    「接続」や「気まぐれな唇」で知られるチュ・サンミが映し出す、遠く離れた国々の“傷の連帯”。朝鮮戦争後、北朝鮮の孤児たちが極秘でポーランドへ送られていたこと自体知らなかったので、衝撃をもって鑑賞した。チュ・サンミの旅に、10代で脱北し、幾多の傷を隠し持つ大学生イ・ソンを同行させ、今も消えない分断の痛みを多重的に描く構成もいい。現在もウクライナから多くの難民を受け入れているポーランドの元教師らが涙ながらに往時を語る顔、その厚い情にただ、感じ入る。

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