1640 日の家族の映画専門家レビュー一覧
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映画監督/脚本家
いまおかしんじ
男の子がどちらの親(里親と実父)にも気を使っているのがよく分かる。いつだって子供は無力で、大人は勝手。描写は繊細。人物の些細な表情や気持ちを丁寧に捉えている。主人公の女の人が宿題をやらせるかどうかのメールを思わず出してしまうところとか、母親の執着ぶりが怖い。可愛いと思うことが、攻撃的な行動になってしまうのが、見ていてジリジリする。兄弟たちが全く分け隔てなくこの子と付き合っているのが良かった。大人ばかりがアレコレ考える。愛情ってめんどくさい。
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文筆家/女優
唾蓮みどり
シモンの実の父親と里親であるアンナがすれ違ってゆく苛立ちや、特別扱いに対するちょっとした子供同士の嫉妬など、そこに流れる人々の感情がとてもリアル。細部にほとばしるリアリティには引き込まれつつも、別れが訪れるのが分かっている設定で里子と過ごした日々を描くことが「感動」を生み出してしまうのは想像に易く、ストーリーとしてはありきたりに感じてしまう。「同じ映画を見たのかな」と映画館で偶然に見かけたシモンを見ながら最後に実子が言うセリフにはぐっときた。
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映画批評家、東京都立大助教
須藤健太郎
普段はこんな言葉遣いはしないが、つい「プチブル」とか「欺瞞」という単語が口を衝く。M・ティエリーの表情を中心に構成されており、彼女の心理が主題なわけだが、その悩みが「贅沢」に見えてしまうのが本作の弱み。戸建てと団地、休暇の有無、要するに富む者と貧しい者が対比されれば、この苦しみもまた恵まれた者の特権であるかのように映るのだ。女優の顔に賭けたといえば聞こえはいいが、里親制度をめぐってこうも一方的な物語で悦に入るとは、傲慢のそしりを免れまい。
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