対峙の映画専門家レビュー一覧

対峙

高校で起きた生徒による銃乱射事件の被害者家族と加害者家族の対話を描くドラマ。事件から6年後、息子の死をいまだに受け入れられないジェイとゲイルは、セラピストの勧めで、事件後にそのまま校内で自ら命を絶った加害者の両親と会って話をする機会を得る。「キャビン」の俳優フラン・クランツによる初脚本・初監督作品。出演は、ドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』のリード・バーニー、「ヘレディタリー/継承」のアン・ダウド、「ハリー・ポッター」シリーズのジェイソン・アイザックス、「グーニーズ」のマーサ・プリンプトン。英国アカデミー賞をはじめ各国の映画賞81部門でノミネート、釜山国際映画祭フラッシュフォワード部門観客賞をはじめ43映画賞を受賞。
  • 映画評論家

    上島春彦

    原題「マス」がカトリックのミサのことだとこの作品で初めて知った。終わり方の意味がそれで分かる。壁にかかっている絵がシスティーナ礼拝堂天井画の〈デルフォイの巫女〉だというのも悪くない趣向。とはいえトリッキーな仕掛けはない。予備知識なしで見るほうがいい。後半佳境に入ると突然シネスコになるのは、本来なら画面が横に広がってこそなのだろうがメディアの限界で惜しい。ジョン・カサヴェテスが「アメリカの影」で試みた演技セッション映画の現在進行形と言える傑作。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    教会の小さな部屋に集まった銃乱射事件の犯人の少年の両親と、彼に殺害された少年の両親。彼らが「対峙」すると、ほぼワンシチュエーションの会話劇が展開されてゆくが、意匠の凝らされた編集とカメラワークで緊張感は決して途切れない。切り返しの単独ショットが続いてゆく末に、同一フレームのなか妻同士が抱きしめ合う終盤に唸る。サスペンスフルな演出に着地をどう迎えるのが最後の最後までわからなかったが、難しいテーマでありながら正攻法で赦しと癒やしの物語に挑んでいる。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    重大事件を起こした少年の家族と遺族が教会の一室で語らう。「ブレックファスト・クラブ」の暗黒面とでも言うべきか。ワンシチュエーションの設定ながらもシナリオは良く練られており、俳優の熱演も響く。とくに前半の探り合いの会話が核心の事件に至るまでの細やかな演出と展開は実に繊細でスリリングであった。となると、今さらやり直しがきかない過去の出来事に関して嘆くのは「無意味」であるという「論理」を覆す決定的な何かを期待しながら見てしまうわけだが、そこはあと一歩か。

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