屋根の上のバイオリン弾き物語の映画専門家レビュー一覧

屋根の上のバイオリン弾き物語

    1971年公開、「屋根の上のバイオリン弾き」のバックストーリーを追ったドキュメンタリー。ロシア革命前夜のウクライナに暮らすユダヤ人一家を描いたブロードウェイ・ミュージカルを映画化したスタッフ・キャストのインタビューを通して、その成立過程が明らかになる。出演は、ノーマン・ジュイソン監督、音楽を担当したジョン・ウィリアムズ、主人公テヴィエを演じたトポル。監督は「ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー」のダニエル・レイム。
    • 映画評論家

      上島春彦

      名作映画の裏側を監督他、関係者がたっぷり語る。ノーマン・ジュイソンと言えば「夜の大捜査線」で黒人が白人を平手で殴り返す場面が有名。ちゃんとここにも引用され、時代の雰囲気を印象付けている。ジュイソンの盟友ジョン・ウィリアムズの饒舌ぶりも特筆すべき。本ドキュメンタリーの監督は映画美術家ロバート・ボイルの生徒だそうで企画に対する姿勢もスタッフワークの痒い所に手が届く手厚さあり。つくづく「バイオリン弾き」は時代のアイコンだったのだなあと実感させる。

    • 映画執筆家

      児玉美月

      ミュージカル曲のリズムに合うように役者が昇降する梯子の段数を調整するという音楽と美術の関係性や画面全体の色調を茶色に見せるためにカメラのレンズにストッキングを被せる撮影方法などが興味を引く。ホロコーストにより欧州では消滅した木造のシナゴーグが資料を基に撮影地に建設され、失われたものへの熱意という意味で「屋根の上のバイオリン弾き」の制作自体がディアスポラ的である。また本作を観る観客も旧ユーゴスラビアという失われた撮影地へ眼差しを向けることになる。

    • 映画監督

      宮崎大祐

      監督のノーマン・ジュイソンを中心に、映画「屋根の上のバイオリン弾き」の制作にまつわるあれこれに迫るドキュメンタリー。ミュージカルを原作とする本作の映画化にあたり、舞台版のキャストがそのまま出演するというケースがあったようで、その際行われた舞台から映画への演技の「翻訳」の逸話が興味深かった。ただし、映画版が「撮られた舞台」を乗り越えられているかどうかはいささか疑問であり、本作もDVD特典についているメイキング映像を超えるような何かが欲しかった。

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