ミート・ザ・フューチャー 培養肉で変わる未来の食卓の映画専門家レビュー一覧

ミート・ザ・フューチャー 培養肉で変わる未来の食卓

動物の細胞を組織培養することで得られる「培養肉」の開発者を追ったドキュメンタリー。地球規模で問題視される食料危機や環境問題を解決するため、各国で開発される培養肉。その最前線にいるアメリカのベンチャー企業のCEOに密着し、培養肉産業の未来を考察する。ナレーションはイギリスの動物行動学者で作家のジェーン・グドール。監督は20年以上にわたり様々なドキュメンタリーを手がけてきたリズ・マーシャル。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    ウマ・ヴァレティさんは声を荒げて怒ったりするところがない。描かれる家庭や仕事場での振る舞いを見ていても真面目そのもの。真面目が行き過ぎてちょっと狂気を感じる。研究所に集まってくる人たちもどこか変。その道でずっと研究してきて、それが存分に追求できる喜び。みんな鼻の穴を広げて研究の成果を語る。ウマ・ヴァレティさんは金集めもうまい。偉い人とちゃんと繋がって計画を進めていく。どうも胡散臭い。意地悪に見てしまう。ウマ・ヴァレティさんとは友だちになれない。

  • 文筆家/俳優

    睡蓮みどり

    培養肉という発想自体がとても面白い。動物を殺さなくて済むかもしれない未来。子供のころから「命を食べているのだ」ということを教わってきたわけだが、培養肉を食べることは命を食べることではないのか。倫理観さえ覆るのがこの映画で描かれるテーマが持つ底知れぬ力ではないだろうか。ウマ・ヴァレティ博士の研究をこの先も知りたい。肉の経済価値も倫理観も大きく変わるであろうその未来をこの目で確かめたい。本作はまさに未来との出会いに向けて開かれた扉だろう。

  • 映画批評家、都立大助教

    須藤健太郎

    これは培養肉についてのドキュメンタリーではなく、ウマ・ヴァレティと彼の会社「アップサイド・フーズ(旧メンフィス・ミート)」を追ったものであり、要するに企業のPR映画である。その点は忘れずにおきたい。本作にはPR映画としての格好に狂いはなく、資金だ投資だレートだと、なんでも数字に還元する企業文化の発露が見られる。だが、屠殺を目撃した幼年期の話から培養肉を食べて喜ぶ検査員の顔のクロースアップまで、共感を呼ぶ「情動」の演出もまたPRならではの文法だ。

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