カード・カウンターの映画専門家レビュー一覧

カード・カウンター

アメリカが掲げた「テロとの戦い」のもと戦争犯罪の十字架を背負い続けるギャンブラーが、ある出会いをきっかけに、復讐と贖罪を賭けた人生の勝負に挑むミステリアス・スリラー。「タクシードライバー」から45年、監督のマーティン・スコセッシが製作総指揮、脚本のポール・シュレイダーが監督・脚本という強力タッグが実現。刑務所で8年間服役した元上等兵の主人公ウィリアムを、カンヌ受賞作「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」のオスカー・アイザックが魅惑的に演じる。ウィリアムと運命的な出会いを果たすカークを「X-MEN:アポカリプス」でアイザックと共演したタイ・シェリダン、ラ・リンダをコメディアンとしても人気のティファニー・ハディッシュ。第78回ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門正式出品。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    VR技術を用いた刑務所内の撮影など目新しい要素も興味深いが、いつも通り孤独な男による贖罪の物語を脇目もふらず描き切ろうとするシュレイダーの徹底ぶりに心がゆさぶられる。無機質で単調なカジノでの仕事ぶりやモーテルの家具を白い布で覆う行為で主人公の態度を簡潔かつ的確に示す演出は、その後周囲との交流で徐々に人間味を取り戻す彼との対照性を見事に際立たせているし、主人公がそれでもどこかに抱え続ける危うさを恐るべきリアリティで体現したアイザックの演技も必見。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    ギャンブル映画にしては緊張感がなさすぎるし、復讐劇としてもその結末はあっけない。ギャンブルと復讐という二つの要素が見事に混ざり合ってるとも言い難い。描かれる一つ一つのシーンや登場人物などには奇を衒ったところがあるわけでもなく、物語の進行もどこかで見たことのあるような流れに沿っているようにも見える。しかし見終えたときには、一体何を見せられていたのかと戸惑わせる不思議な味わいがある。真剣なのか冗談なのか、?みどころのないポーカーフェイスな映画。

  • 文筆業

    八幡橙

    ポール・シュレイダー×マーティン・スコセッシ。45年の歳月を経て、なお「タクシードライバー」を思わせる暗い過去を背負った孤高の男の罪と贖罪の物語を生み出す両者の姿勢に何より感服。オスカー・アイザック主演の今回は、ギャンブルに生きる刑務所帰りの男と青年との繋がりや大人の恋が描かれる。穢れた社会で結び付く、世代を超えた関係の清廉さや根っこに疼く純情など、大人になったトラヴィスをなぞるような感慨も。願わくはもう一歩観る者をひりひりさせる何かが欲しい。

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