宇宙探索編集部の映画専門家レビュー一覧
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映画監督
清原惟
まるでYouTube動画のような、同ポジのまま短くつまむ独特の撮り方、編集に、はじめ戸惑った。しかし、宇宙人の手がかりを探す旅が始まると、一気に世界が広がっていく感覚があって、あの編集は日々の閉塞感を表していたのかもしれないと思った。設定も現実感がないし、旅の中で人間関係が深まるわけでもなく、それぞれの人物のこともあまりわからないままなのに、なぜだか写っている人々の皆に切実さが感じられる。YouTube的表現と映画的抒情が混ざって生まれた、現代のSF。
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編集者、映画批評家
高崎俊夫
『三体』以後、中国産SFがブームだが、こんな愛すべきSF映画の珍品がつくられていたとは驚きだ。あまりに低予算の素朴な手づくり感、巧まざるすっ惚けた笑いは「不思議惑星キン・ザ・ザ」を彷彿させる。メランコリックなUFOオタクの主人公の怪しい磁力に引き寄せられるように旅の途上で奇人・変人がゾロゾロ登場してくる。中国辺境最深部の鄙びた景観が次第に〈異界〉の様相を呈してくるのも見所である。高度経済成長とは無縁な敗残者たちが抱いた夢想の?末はなかなかにほろ苦い。
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映画批評・編集
渡部幻
「トンソン荘」とともにフェイクドキュメンタリー風だが、目撃者たるカメラの位置付けは厳密ではない。宇宙への幻想が失われた21世紀を生きる心優しき宇宙オタクのオヤジが未知との遭遇を求める旅を追う。謎解きの情熱もまたひとつの愛のかたちだから、夢見心地の狂気に誘われもするし、時には実存的な不安を伴う。合理的な時代性に反した情熱との折り合いは面白いテーマだが、中年男の夢の珍道中に付き合う仲間たちの悲喜こもごもは、演出と演技に退屈して、ぼくには間が持てなかった。
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