ドリー・ベルを覚えているかい?の映画専門家レビュー一覧

ドリー・ベルを覚えているかい?

「アンダーグラウンド」のエミール・クストリッツァ監督のデビュー作で、1981年ヴェネチア国際映画祭新人賞受賞作。サラエヴォに住む少年ディーノの成長を瑞々しい感性で描いた青春ストーリー。2013年ヴェネチア国際映画祭で上映後、日本劇場初公開。出演は、「アンダーグラウンド」のスラヴコ・シュティマッツ、「パパは、出張中!」のスロボダン・アリグルディチ、「灼熱」のミラ・バニャツ、「ウェディング・ベルを鳴らせ!」のリリャナ・ブラゴイェヴィチ。
  • 翻訳者、映画批評

    篠儀直子

    独特のユーモアや音楽への敏感さなど、のちの作品(「アンダーグラウンド」等)に通じる要素はあるけれど、むしろそれらとのトーンの違いに驚かされる。チェコ・ヌーヴェルヴァーグっぽく感じるのを不思議に思いつつ観たのだが、クストリッツァはFAMU(チェコ・ヌーヴェルヴァーグの拠点となった映画学校)の出身だから、めちゃくちゃ意外なことというわけでもないだろう。話は典型的な成長物語。ドリー・ベルとの恋以上に、父親との関係の描写、および父親の人物像に心を動かされる。

  • 編集者/東北芸術工科大学教授

    菅付雅信

    日本未公開のクストリッツァ監督の長篇デビュー作。旧ユーゴスラヴィアのサラエヴォの少年が、謎の女性ドリー・ベルとの共同生活を始める、クストリッツァ版「青い体験」。思春期の少年の夢や戸惑いが丁寧に描かれ、クストリッツァ流のユーモアや弾け具合も織り交ぜた、地球の辺境の少年の話ながらも誰もが共感できる普遍的青春映画。辺境の地で悶々としつつ大人の世界/大きな世界とつながりたいという少年の思いが、後の爆発的にイマジナブルな「アンダーグラウンド」につながるのがよくわかる。

  • 俳優、映画監督、プロデューサー

    杉野希妃

    クストリッツァのユーゴスラヴィアへの愛と悲しみ、混沌とした世界観は27歳時の初監督作品でも遺憾なく発揮されていた。催眠術に凝る息子と、催眠術なしで共産主義の到達を願う父親の政治談議が微笑ましい。終盤、自己暗示を肯定する父親の意外な言葉に、そこはかとない優しさを感じてホロリとしてしまった。男性陣が囲い、征服し、共有するマドンナ、ドリー・ベルの身の置き場のなさが私には痛いほど胸に突き刺さった。死や性と向き合い成長する少年のほろ苦い青春、唯一無二感。

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