バティモン5 望まれざる者の映画専門家レビュー一覧

バティモン5 望まれざる者

パリ郊外を舞台に行政と住民たちの対立を描いた社会派ドラマ。労働者階級の移民家族が多く暮らすエリアの一画・バティモン5では、臨時市長ピエールにより老朽化した団地の取り壊し計画が進められていた。だが、その横暴なやり方に住民たちは猛反発する。監督は「レ・ミゼラブル」でパリ郊外の犯罪多発地区モンフェルメイユを舞台に、警察と少年たちとの抗争を描き、第72回カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞したラジ・リ。横浜フランス映画祭2024上映作品。
  • 文筆業

    奈々村久生

    移民が暮らす集合住宅の一室で人が亡くなり、大勢の手に担がれた棺が、狭い通路や階段に阻まれながら外に運び出される。その過程でこの居住区の状況や問題が一目瞭然になるだけでなく、ここに生きる人々の息づかいまで顕にしてしまう描写が素晴らしい。声をあげて行動する住人たちの力を体感させる音の使い方も効いている。これが日本だったら成り立たない絵面だと思いつつ、彼らの闘いが成功しているとも言えず、武力の応酬では誰も救われないという現実の再生産に虚しさを突きつけられる。

  • アダルトビデオ監督

    二村ヒトシ

    同月公開の「ミセス・クルナスvsジョージ・W・ブッシュ」と同じく、人種や経済格差の前でまったく公平ではない「民主」政治や無関心な世間から、排除され、軽くあつかわれて侮辱される人々がテーマだが、こちらはそれを極めてシリアスに描く。生活に余裕のある側の(とは本当は限らないのだが)まじめな人が、自分はより良い人間であろうとして結果的に弱い人たちを傷つけるどころか、生活まで奪うことになる現実。これは資本主義が、というか人類が背負ったバグなのだろうか。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    団地の取り壊しの場面から始まるのは象徴的だ。そして新市長が移民や貧困層の切り捨てに急進的な姿勢を見せるのが、日本と似ている。ラジ・リは前作の「レ・ミゼラブル」ではほぼ男だけの世界を描いたが、団地に暮らすのは老若問わず女性もいる。しかし女性のアビーが指導者になるのは難しい。貧困地区が犯罪多発地域と重なる傾向があり、団地の温存もひとつの生き延びる術にすぎない。問題の解決は複数の人間で対処しなければ難しいのに、女性のアビーは一人で立ち上がるしかない。

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