殺人鬼の存在証明の映画専門家レビュー一覧

殺人鬼の存在証明

旧ソ連史上最悪の殺人鬼とされていたアンドレイ・チカチーロなど数々の連続殺人犯をモデルにしたサイコスリラー。1991年、負傷した女性が保護され、その手口は10年以上続く連続殺人事件と酷似。ワリタが容疑者として浮上するが、彼は驚くべき真実を口にする。監督は、カーディ・Bがカニエ・ウェストなどのミュージックビデオや短編作品などを手がけてきたラド・クヴァタニア。初長編作品である本作の制作に向け、数々の連続殺人事件を研究し、当時働いていた刑事や精神科医、犯罪学者に取材し、連続殺人鬼の人物像を組み立てた。
  • 俳優

    小川あん

    かなりウェルメイドに作られている。時代を交錯させ、章ごとの展開が事件を複雑化させる。徐々に加害者と被害者の周囲をめぐる人間関係が露呈し、一連を見届けた鑑賞者がきちんと納得できるように事件は帰結する。それゆえに、少しちゃんとしました感が強い。この人がこうなって、これとこれが繋がってといった、人物相関図を作りたくなるような映画。そうなると「なるほど。よくできたクライム・サスペンスとして、最後まで飽きずに見終えました!」と発展が難しくなってしまう。

  • 翻訳者、映画批評

    篠儀直子

    2021年のロシアの映画製作がどういう状況だったかはわからないが、古今東西のさまざまな映画をきちんと学んだ人が撮った作品という印象(ちなみに監督はジョージアとウクライナにルーツがある人らしい)。手のこんだ構成とこだわりの映像で、いつの間にやらぐいぐい引きこまれる。これと同様に実際の事件に想を得たポン・ジュノの「殺人の追憶」もそうだったが、捜査と並行して警察組織の堕落が描かれる趣向で、ソ連時代が舞台とはいえ、権力こそが狂っているのだという痛烈なメッセージが。

  • 編集者/東北芸術工科大学教授

    菅付雅信

    旧ソビエト連邦での52名を殺害した連続殺人鬼をモチーフにしたサイコスリラー。熱血捜査官が容疑者を逮捕したところですべてが解決したかと思いきや事態は思わぬ展開を見せる。監督したラド・クヴァタニアはCFやカニエ・ウェストのMVなども手掛けるだけに技巧派で、凝った編集もあり最後まで飽きさせないが、策士策に溺れるならぬ技巧派技に溺れる的なトゥーマッチ感。画作りと技巧性ではフィンチャーを想起させるが、フィンチャーのような洒落っ気はなく、ロシア的鈍重さが画面からのしかかる。

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