アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家の映画専門家レビュー一覧

アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家

ヴィム・ヴェンダースが、絵画、彫刻、建築など多彩な表現で壮大な世界を創造する戦後ドイツを代表する芸術家アンゼルム・キーファーの半生と現在を見つめたドキュメンタリー。3D&6Kの撮影により、作品が目の前に存在するかのような臨場感で迫って来る。アンゼルム・キーファー本人が出演する他、その青年期を息子ダニエル・キーファーが演じ、幼少期をヴェンダースの孫甥アントン・ヴェンダースが務める。
  • 映画監督

    清原惟

    アンゼルム・キーファーの作品を紹介するためにヴェンダースがとった手法は、言葉を削ぎ落として、高精細で抽象的なイメージを使うということ。少年時代のシーンなどはノスタルジーを感じてしまわなくもないが、同世代の作家として世界観に共鳴して撮っているのも窺える。制作風景の場面では、80歳近い作家自身が熱々の液体を絵にぶちまけていてスリリングで良かった。ヨーロッパの負の歴史に向き合う作家が、現代社会とどのように向き合っているのか、もっと知りたい気持ちが芽生えた。

  • 編集者、映画批評家

    高崎俊夫

    ヴェンダースは敗戦の前後に生まれ、同時代としての戦後を生きたアンゼルム・キーファーの膨大な作品を俯瞰する際、注釈としてハイデガーとパウル・ツェランを引用する。ナチズムの〈凡庸な悪〉を告発したハンナ・アーレントの愛人・師でありナチスに加担した大哲学者と虐殺から生き残ったユダヤ詩人の対比が印象に残る。とりわけツェランの肉声による詩の朗読が延々と流れる件が忘れがたい。ホロコーストの呪縛を抱えた母国へのアンビヴァレントな想念が本作の純粋心棒といえよう。

  • 映画批評・編集

    渡部幻

    ドイツの芸術家アンゼルム・キーファーのドキュメンタリー。冒頭にドレスの彫刻群が現れる。頭がなく、代わりに本や石が乗せられ、ガラスの破片が刺さったものもある。女性の声——「私たちは名もなく忘れられし者。でも私たちは忘れない」——空間を時間が浮遊している。ドイツ降伏の1945年に生まれたアンゼルムは、自国の過去と対峙し、その忘却に抗う壮大な絵画と彫刻を連作。同年生まれのヴェンダースは「ベルリン」を撮った。3Dを2Dで観た。が、それでもここには紛れもない“映画の感動”があった。

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