マミー(2024)の映画専門家レビュー一覧
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文筆家
和泉萌香
95年生まれの私にとってこの事件は物心がついてから一番初めに鮮烈に心に残ったニュース映像の一つだ。少し大人になり、様々な犯罪事件のニュースを見るたび、女は加害者であろうが被害者であろうが、こういう好奇の対象として晒されてしまうんだ、と思った。不謹慎ながら大変面白かった。ここまでの矛盾や疑問が事実としてあるにもかかわらず、訴えを無視し再検証しないままでいることは、いち事件を超え、我々日本国民みなにもっと身近な形で、恐ろしい形として噴出するのでは。
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フランス文学者
谷昌親
このドキュメンタリー映画の興味深いところは、あえて客観的な立場を棄てているところだ。もちろん、丹念な取材を重ねつつの撮影だということは観ればわかるが、客観性にこだわるのであれば、もっと別のアプローチや撮影の仕方がありえただろう。しかし、死刑判決にいったん疑義を抱いた二村真弘監督は、その疑義を原動力に突っ走る。そして、ついには取材のために法を破る挙にまで出て、そうした自分を被写体にしてもいる。そのあやうさによる揺らぎがこの映画を「作品」にしている。
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映画評論家
吉田広明
主人公は死刑囚の長男と監督自身である。関係者ながら当時小学生で半ば傍観者であった長男が、外在的な監督の視点を共有して真相探求を主導する。その過程自体の粘り強さに頭が下がるし、説得もされるが、正しさの主張だけでは映画として食い足りない気がするのも確かで、被告一家、近隣住民の人物像を掘り下げる(これが難しいのは分かる)なり、真犯人に関する新たな視点を打ち出すなりしてほしかったが、これは犯罪映画を見過ぎている人間のないものねだりばかりとは言えまい。
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