園子温 ソノシオン

  • 出身地:愛知県豊川市豊川仲町
  • 生年月日:1961/12/18

略歴 / Brief history

【“俺”印の旗を掲げ、個人映画の荒野を疾る奇才】愛知県豊川市の生まれ。園子温は本名。豊橋東高校在学中より詩作を始め、専門誌では“ジーパンをはいた朔太郎”と称された。次に映画表現も志し、1984年の法政大学入学後は、映画制作グループに属して8ミリ映画を発表。映像日記の手法で自我のイメージを突き付けた「俺は園子温だ!!」がPFF86に、地方の若者の悶々とした叫びを異なった表現の二部構成で描く「男の花道」がPFF87に、連続入選を果たす。さらにPFFスカラシップの権利も得て、同システムによる88年製作の16ミリ作品「自転車吐息」が初の一般劇場公開作となった。本作はベルリン映画祭正式招待をはじめ多数の海外映画祭で上映され、以後の実験的な作風を持つ独立製作作品の多くも海外を廻ることになる。初老の殺し屋が死ぬための部屋を不動産屋の女性と探す「部屋/THE ROOM」(93)、秒単位で22歳の誕生日を待つ日記映画「桂子ですけど」(97)、アーティスト3人の記録と純愛ドラマが交錯する映像詩「うつしみ」(00)と自主映画風味を残した意欲作は続き、2002年には、集団自殺事件とカルト集団を扱ったOV枠の「自殺サークル」を発表。これが単館ヒット作となり、続編「紀子の食卓」(05)や「気球クラブ、その後」(06)など商業傾向の強まった作品を連打する。09年には父子ドラマに正面から挑んだ「ちゃんと伝える」で新たな観客層を開拓する一方、大長編「愛のむきだし」がキネマ旬報ベスト・テン4位に入選するなど、いよいよ園の名が一般に広まるに至った。2010年、「冷たい熱帯魚」(10)が公開。【個人映画から社会派娯楽作へ】自主映画作家を支援するPFFスカラシップ制度の初期大成者であり、その後もインディーズ作家の姿勢を守り続ける。一貫して自我を投影する映画を作り、「自転車吐息」までの自主映画時代は“俺”自身の姿をフィルムに刻んで、走り出そうにも目的地が見出せない自我の苛立ちを鮮烈に描出した。実験色の強い劇場用初期作品も、園自身の観念を他者に託したものとして見られる。この個人映画的な傾向は、女子高生が恋愛に向けて疾走する「うつしみ」と、危険地帯を求めて学生がニューヨークを彷徨する「HAZARD」(06・製作は02年)で極められた。転回点となるのは「自殺サークル」「紀子の食卓」の二部作。ここでは社会への視線や家族像についての観念がスリラーふうの物語に織り込まれ、以後、自我の追求姿勢は商業作品の表層に潜り込むかたちとなった。「夢の中へ」「奇妙なサーカス」(05)では現実と虚構の交錯から自我の不安を描き、「気球クラブ、その後」「ちゃんと伝える」は個人の想いを青春ドラマに滑り込ませる。世はすでに個人映画的な等身大ドラマにあふれる時代。園子温は反語的に「愛のむきだし」を集大成として提示し、なお個人映画を劇映画に転化する地平を疾走し続ける。

園子温の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • エッシャー通りの赤いポスト

    制作年: 2021
    「プリズナーズ・オブ・ゴーストランド」の園子温がワークショップで選出した役者たちで撮影した群像劇。映画監督・小林は新作映画「仮面」の出演者を募集する。俳優志望の夫を亡くした未亡人や殺気立った訳ありの女など、様々な経歴の持ち主が応募してくる。第49回モントリオール・シネヌーヴォー映画祭観客賞受賞。
  • プリズナーズ・オブ・ゴーストランド

    制作年: 2021
    園子温監督のハリウッドデビュー作でニコラス・ケイジ主演のアクション。悪党のヒーローは、一帯を牛耳るガバナーの支配から逃亡した女を連れ戻すことを命じられる。彼は特殊なボディスーツに身を包み、美しくも暴力的な世界“ゴーストランド”にたどり着く。出演は、「CLIMAX クライマックス」のソフィア・ブテラ、「私の中のあなた」のニック・カサヴェテス、「スリー・フロム・ヘル」のビル・モズリー。
  • 狂武蔵(2020)

    制作年: 2020
    長きにわたり日本のアクション映画に多大な影響を与え続けている「RE:BORN」などの坂口拓主演による、日の目を見ぬまま眠っていた幻のアクション時代劇。たった独りで400人の相手を斬り捨てる伝説の剣豪・宮本武蔵の姿を77分ワンシーン・ワンカットで映し出す。共演は「キングダム」の山﨑賢人、「ある街の高い煙突」の斎藤洋介。監督は「キングダム」のアクション監督を務めた下村勇二。
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  • 愛なき森で叫べ

    制作年: 2019
    「自殺サークル』、「愛のむきだし」、「ヒミズ」など、独自の作風で刺激的な作品を発表してきた園子音監督が、Netflixオリジナル映画として描くサスペンススリラー。シッチェス・カタロニア国際映画祭2019 ニュー・ビジョンズ部門への正式出品。2019年10月11日(金)よりNetflixにて配信。
  • レッド・ブレイド(2018)

    制作年: 2018
    「冷たい熱帯魚」の園子温原案による忍者アクション。いじめられっ子の高校生マコは、図書室で忍者の児童書『雷風刃』を読み、忍者に憧れていた。ある夜、下校途中のマコの前に『雷風刃』の忍者たちが現れ、マコはタイムスリップして伊賀の世界にたどりつく。出演は、ドラマ『チアダン』の小倉優香、舞台『MIRRORION』の搗宮姫奈、「アズミ・ハルコは行方不明」の花影香音、「孤狼の血」の岩永ジョーイ。監督は、「コントロール・オブ・バイオレンス」の石原貴洋。「RE:BORN リボーン」の坂口拓が総合演出と伝説の忍者役で出演している。
  • クソ野郎と美しき世界

      制作年: 2018
      “新しい地図”の稲垣吾郎、香取慎吾、草彅剛と、園子温ら4人の監督のコラボで贈る全4話のオムニバス。全力で走る女フジコ。彼女を追う極悪人マッドドッグ。さらに歌を食べて生きる少女“歌喰い”も登場し、クソ野郎たちが集うショーが繰り広げられる。共演は「幼な子われらに生まれ」の浅野忠信、「散歩する侵略者」の満島真之介、「劇場版 お前はまだグンマを知らない」の馬場ふみか、「素敵なダイナマイトスキャンダル」の尾野真千子。