ジャン=リュック・ゴダール ジャンリュックゴダール

  • 出身地:フランス、パリ
  • 生年月日:1930/12/03
  • 没年月日:2022/09/13

略歴 / Brief history

【独創的な作品を生み続けるヌーヴェル・ヴァーグの独走者】スイス系の家系でパリに生まれ、フランスとスイスを行き来しながら育った。ソルボンヌ大学在学中、シネクラブ等でフランソワ・トリュフォーらと知り合い、アンドレ・バザンを中心に映画批評誌『カイエ・デュ・シネマ』を創刊。映画の評価基準となるのは監督であるという“作家主義”を提唱し、自主製作でその実践活動に入った。1961年から67年まで自作の主演を務めた女優アンナ・カリーナと61年に結婚し64年に離婚、「中国女」(67)に主演したアンヌ・ヴィアゼムスキーと67年に結婚し71年に離婚している。54年、24歳で短編ドキュメンタリーを初監督。59年の「勝手にしやがれ」で長編デビューを飾り、一躍ヌーヴェル・ヴァーグの旗手と称えられた。「小さな兵隊」(60)、「女は女である」(61)、「女と男のいる舗道」(62)、「軽蔑」(63)などでは軍隊・女性束縛・売春・資本主義といった社会的テーマの作品を手がけ、「気狂いピエロ」(65)でヴェネチア映画祭青年批評家賞を受賞。やがて毛沢東主義に傾倒し、政治的思想表明が顕著な「中国女」「ウィークエンド」(67)などを発表する。以降は「勝手に逃げろ/人生」(79)で復帰するまで商業映画と絶縁し、個人の署名をも捨て、同志らと“ジガ・ヴェルトフ集団”を名乗って政治的メッセージを発信した。商業作品復帰後の80年代以降は芸術と哲学に回帰し、「カルメンという名の女」(83)でヴェネチア映画祭金獅子賞を受賞したほか、主に物語の表現方法を模索。「ゴダールの映画史」(98)では映画という存在を問い、「愛の世紀」(01)や「アワーミュージック」(04) では文学・音楽を内省するなど、今日に至るまで独自の作品を発表し続けている。【既成概念を打ち破る知性の作家】50年代末にフランスで沸き上がった新しい映画潮流“ヌーヴェル・ヴァーグ”の中でも、特に「勝手にしやがれ」は撮影所製作のスタイルとはまったく異なった撮影・演出方法を採って映画の既成概念を壊し、映画の革命と評価された。続く諸作では、映画に政治的な意味合いを与えて主題のうえでも映画史に刺激をもたらし、政治に燃えた若者世代の最前線闘士として活動することになる。68年のカンヌ映画祭粉砕事件の後にヌーヴェル・ヴァーグの潮流から外れ、70年代の実験的展開を経て、80年代前半の作品で一般的な題材のなかの審美性を追及し、やがて映像コラージュで物語を解体する方向へと進んだ。映画そのものを映画で思考した「映画史」はそのひとつの到達点であるとする見方もある。時に作品は難解とも受け止められるが、美学と思考の独創性は他の追随を許さない。2022年9月13日、居住するスイスにて逝去。享年91歳。

ジャン=リュック・ゴダールの関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • Scenarios & Expose du film annonce du film “Scenario”

    制作年: 2024
    ジャン=リュック・ゴダールが自ら選んだ死の前日に完成した遺作。コラージュ技法による18分の本編と、ゴダール自身が制作ビジョンを語るドキュメンタリー映像の2部構成。監督・脚本・編集はジャン=リュック・ゴダール。出演はジャン=リュック・ゴダール、ジャン=ポール・バッタジア、ファブリス・アラーニョ。10月28日より開催の第37回東京国際映画祭(2024)企画「TIFFシリーズ」にて上映。
  • ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争

    制作年: 2023
    仏映画界において革新的な作品を手がけヌーヴェルヴァーグを先導し、2022年に他界したジャン=リュック・ゴダール監督の遺作となった短編。手書きの文字や絵、写真、映像がコラージュされ、音楽やナレーションが一つになった、監督の集大成とも言える作品。製作は、サンローランが立ち上げた映画会社サンローランプロダクション。2023年第76回カンヌ国際映画祭クラシック部門選出作品。
  • イメージの本

    制作年: 2018
    ヌーヴェル・ヴァーグの巨匠ジャン=リュック・ゴダールが、様々な絵画、映画、文章、音楽をコラージュし、暴力、戦争、不和などに満ちた現代世界が向かおうとしている未来への怒りを込めて綴った全五章の物語。ゴダール自らナレーションを担当している。2018年のカンヌ映画祭では、スペシャル・パルムドールを受賞した。
    66
  • さらば、愛の言葉よ

    制作年: 2014
    「勝手にしやがれ」「アワーミュージック」のジャン=リュック・ゴダールによる初の3D長編作品。人妻と独身男、一匹の犬が交差しながら、“言葉”が立体的に紡がれていく。撮影は「ゴダール、ソシアリスム」のファブリス・アラーニョ。第67回カンヌ国際映画祭審査員特別賞のほか、本作の重要な役割を演じたゴダールの愛犬ロクシーに“パルムドッグ審査員特別賞”が授与された。
    78
  • ブリジット・バルドー 誤解

    制作年: 2013
    フランス女優として初の世界的スターとなったブリジット・バルドーの熱狂的崇拝者であるダヴィド・テブール監督によるドキュメンタリー。多数のフッテージやプライベートショットを用いて、ビデオレターの形式で考察する女優ブリジット・バルドーの肖像とは。セルジュ・ゲンズブール、ロジェ・ヴァディム、ジャン=ルイ・トランティニャン、ジャン=リュック・ゴダールら、同時代の様々なフランスの映画・音楽界の重鎮が登場。特集上映『ブリジット・バルドー レトロスペクティヴ BB生誕90年祭』にて劇場初公開。
  • 旅する写真家 レイモン・ドゥパルドンの愛したフランス

    制作年: 2012
    フランスを代表する写真家レイモン・ドゥパルドンが倉庫に眠るアウトテイクをつないで制作したドキュメンタリー。彼の人生のハイライト集であると同時に、旅を通じて新しい自分と愛すべきものを発見する。2012年カンヌ国際映画祭、東京国際映画祭で上映。共同監督は、妻であり、ドゥパルドンの映像作品で製作・録音を担当してきたクロディーヌ・ヌーガレ。