ジョニー・トー

  • 生年月日:1955/04/22

略歴 / Brief history

【返還後の香港映画界に屹立する、遅れてきた巨人】香港生まれ。1972年よりラジオ局に勤務し、74年にテレビ局TVBに入局、武侠ドラマを中心に多数のドラマを演出した。その後、主演俳優の推薦を受けて、80年の武侠映画「碧水寒山奪命金」で監督デビューを果たす。映画に専念するのは80年代半ばから。86年のコメディ・ファンタジーを皮切りにコンスタントに撮り続け、チョウ・ユンファのメロドラマ「過ぎゆく時の中で」(89)で香港アカデミー賞とされる金像奨の監督賞にノミネート。コメディ「チャウ・シンチーの熱血弁護士」(92)が興収記録を塗り替えるなど、実力派ヒットメーカーとしての地位を固める。90年からは製作業も兼ねつつ、「ワンダーガールズ/東方三侠」「マッドモンク/魔界ドラゴンファイター」(93)などの娯楽アクションを次々とヒットさせた。やがて興行成績に縛られない映画づくりを志し、香港の中国返還を控えた96年に製作会社・銀河映像を設立。一方で恋愛コメディを手がけつつ、「暗戦/デッドエンド」(99)、「フルタイム・キラー」(01)など作家性の強いノワール系アクション映画を連打する。99年の「ザ・ミッション/非情の掟」は香港金像奨監督賞を獲得、以後も同賞の常連作家として「PTU」(03)や黒社会ものの「エレクション」(05)でも監督賞を受賞した。近年では意欲作が連続して国際映画祭に招待され、「エレクション」「エグザイル/絆」(06)、「マッド探偵」(07)、「スリ」(08)、「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」(09)は三大映画祭のコンペに出品、国際的な注目を集めている。【ネオノワールに生きる】70年代末から80年代前半の香港映画では、海外で映画を学びテレビ界から転身した“香港ニューウェーヴ”と呼ばれる新世代が台頭する。ジョニー・トーも、アン・ホイやツイ・ハークらに続くこの世代だが、評価を得るのはやや遅れた第二世代の台頭期であり、商業主義作品を主としたこともあって、映画作家としては無名の存在だった。しかし香港の中国返還によりジョン・ウーなど代表的作家が海外へ流出すると、その跡を継ぐかのごとく作家色を前面に出し、特に香港ノワールの分野で目覚ましい成果を残していく。一方では、盟友ワイ・カーファイとの共同監督「ターンレフト・ターンライト」「マッスルモンク」(03)ほかの恋愛映画や商業的活劇によって、興行力に乏しい作家映画づくりのための資本を稼ぐといった製作のバランス感も発揮。その研ぎ澄まされた様式的映像で綴られるのは、「ザ・ミッション」「PTU」「エグザイル」に特に顕著な、立場を超えた男たちの友情・絆であり、アクションの美学である。これに前述の商業作品に見られた“運命の強制力”を併せ考えると、トー作品全般のモチーフとなっているのはアジア的な“業”の世界と言えよう。

ジョニー・トーの関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • 七人樂隊

    制作年: 2021
    「ホワイト・バレット」のジョニー・トー監督がプロデュース、「燃えよデブゴン」のサモ・ハン監督ら香港を代表する7人の監督がそれぞれ1950年代から未来までの各時代を1つずつ担当し香港の人々の生活を描く、全編35mmフィルムで撮影されたオムニバス。サモ・ハン監督による「稽古」、「桃さんのしあわせ」のアン・ホイ監督による「校長先生」、「風にバラは散った」などの監督作の他ウォン・カーウァイ監督作「欲望の翼」「楽園の瑕」の編集を手がけたパトリック・タム監督による「別れの夜」、「スネーキーモンキー 蛇拳」「ドランクモンキー 酔拳」などの監督作の他「マトリックス」シリーズなど多数の作品のアクション監督を務めるユエン・ウーピン監督による「回帰」、ジョニー・トー監督による「ぼろ儲け」、「友よ風の彼方に」のリンゴ・ラム監督の遺作となった「道に迷う」、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」シリーズのツイ・ハーク監督による「深い会話」を収録。第73回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション選出作品。第21回東京フィルメックスにて観客賞を受賞(映画祭タイトル「七人楽隊」)。
  • ホワイト・バレット

    制作年: 2016
    香港ノワールを代表するジョニー・トー監督が、ギャングと警部、医師の駆け引きを活写したサスペンス・アクション。強盗団一味のチョンが頭に被弾し、病院に担ぎ込まれる。チャン警部が見張る中、医師トンは手術を拒否するチョンを説得しようとするが……。一味から情報を聞き出そうとする警部を「ドラッグ・ウォー 毒戦」のルイス・クーが、天才外科医を「最愛の子」のヴィッキー・チャオが、出し抜こうとするギャングを「モンスター・ハント」のウォレス・チョンが演じ、最悪な状況下で命をかけた戦いを繰り広げていく。ジョニー・トーの製作会社ミルキーウェイ創立20周年作品。
    60
  • 香港、華麗なるオフィス・ライフ

    制作年: 2015
    女優だけでなく映画監督や歌手としても活躍するシルヴィアチャンが脚本・演出を手がけた舞台を、「ドラッグ・ウォー 毒戦」のジョニー・トー監督がミュージカル映画化。第16回東京フィルメックス特別招待作品として上映(上映日2015年11月23日、26日/映画祭タイトル:「華麗上班族」)。新宿シネマカリテの特集企画『カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2016』にて上映。
    0
  • 名探偵ゴッド・アイ

    制作年: 2013
    「エグザイル/絆」「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」のジョニー・トーが製作・監督を務めるクライム・スリラー。香港を舞台に、盲目の探偵と女刑事が手を組み、連続女性失踪事件の真相を追う。出演は「インファナル・アフェア」のシリーズのアンディ・ラウ、「イエス タデイ、ワンスモア」のサミー・チェン、「鳳凰 わが愛」のグォ・タォ。
    80
  • ドラッグ・ウォー 毒戦

    制作年: 2012
    「エグザイル/絆」「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」のジョニー・トーによる監督50作目。巨大麻薬組織に挑む中国公安警察の極秘潜入捜査を赤裸々に描き、現代中国の“闇”を映し出す。出演は「アクシデント」のルイス・クー、「モンゴル」のスン・ホンレイ、「イップ・マン 誕生」のクリスタル・ホアン、『スウィートシンフォニー』のウォレス・チョン。
  • モーターウェイ

    制作年: 2012
    「頭文字D THE MOVIE」のショーン・ユーとアンソニー・ウォンが、7年ぶりに共演したカー・バトル・アクション。卓越した運転技術を持つ覆面パトカーチームと、超一流の逃がし屋との命を懸けた極限の闘いを描く。監督は、「軍鶏 Shamo」のソイ・チェン。製作は、「エグザイル/絆」のジョニー・トー。
    70

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