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略歴 / Brief history
【個性派俳優から独自の抒情とユーモアを紡ぐ才人監督へ】神奈川県横浜市の生まれ。幼い頃から父親に連れられて見た映画の魅力の虜になる。高校の美術部で自主映画を撮り始め、1976年に多摩美術大学グラフィック科に入学してからは、のちに劇作家となる宮沢章夫らとともに本格的な自主映画製作に没頭する。その一方で、TBS『ぎんざNOW』などの素人参加番組に出演。劇団・青年座にも入団し、大学在学中から俳優の道を歩み始めた。83年のテレビ朝日『テレビ演芸』で顔面模写、形態模写などで勝ち抜きチャンピオンとなり、一躍コメディアンとして注目を浴びる。映画初出演作は、滝田洋二郎のピンク映画「痴漢電車・下着検札」(84)で、松本清張の形態模写を演じきる。以降、少しでも映画の現場に関わりたいと精力的に出演を重ね、「ロケーション」(84)の森﨑東、「薄化粧」(85)の五社英雄からは演技上の指針を授けられたという。石井隆の監督デビュー作「天使のはらわた・赤い眩暈」(88)で映画初主演。これを機に俳優として大きく飛躍した。五社の「226」(88)に出演した縁で同作のプロデューサー・奥山和由から監督を勧められ、91年の「無能の人」で監督デビュー。芸術選奨文部大臣新人賞、ヴェネチア映画祭国際批評家連盟賞など国内外で高い評価を受け、続く第2作「119」(94)もキネマ旬報読者選出ベスト・ワンに輝いた。並行する俳優業も充実し、95年には憧れの存在だった岡本喜八監督の「EAST MEETS WEST」(95)などに出演して、キネマ旬報助演男優賞を受賞。NHK大河ドラマ『秀吉』(96)の主役にも抜擢され、その人気を不動のものとする。それ以後も監督としては、「東京日和」(97)、「連弾」(01)、「サヨナラCOLOR」(05)、「山形スクリーム」(09)とゆっくりなペースではあるが、さまざまなジャンルに跨った作品を連打。俳優・タレントとしてのマルチな活動に加え、個性的な映画監督としての地歩を固めている。【熱い想いを抱えたシネフィル】異業種監督が急増した80年代終盤から90年代にかけて、映像他ジャンルからだけでなくタレント・作家・ミュージシャンなどが映画を撮るケースが頻発した。竹中が「無能の人」を撮った91年だけでも、秋元康、島田紳助、戸井十月、椎名誠らが商業映画デビューを果たしている。竹中の監督デビューもそうした流れのひとつと見られたが、幼い頃からのシネフィルであり、膨大な量の映像ソフト(当時はレーザーディスクだった)を所有する竹中の映画に対する想いは、決してタレントの余技に留まらない熱さがあった。同じお笑い出身で、先行して監督としても活躍していた北野武の存在も、竹中の監督挑戦に影響を与えていただろうが、竹中独特の感性はそうした状況論とは無関係に、監督業の成功へと自らを導いていった。いつも異色の題材を扱い、乾いたタッチで淡々としたリズムを刻む竹中演出は、独自の抒情とユーモアを紡いでいく。
竹中直人の関連作品 / Related Work
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裏社員。-スパイやらせてもろてます‐
制作年: 2025WEST.デビュー10周年の集大成となる、WEST.全員出演の爽快コメディ。表では解決できない問題を秘密裏に処理する会社員、通称「裏社員」が、商業施設建設のために商店街に侵入したことから起こる騒動を描く。スパイらしい激しいアクションとドタバタ喜劇、そこにラブストーリーを加えつつ、笑いあり、アッと驚くだまし合いあり、ホロリとする人情ありの、観た人を元気にする物語。メガホンを取るのは「劇場版おっさんずラブ~LOVE or DEAD~」「極主夫道 ザ・シネマ」「Gメン」の瑠東東一郎。2009年、ドラマ初監督作品となる“DRAMADA-J”「いつかの友情部、夏。」には、デビュー前の神山智洋、小瀧望、重岡大毅、藤井流星が出演しており、WEST.とは浅からぬ縁のある瑠東監督。ライブ、芝居とさまざまな経験を積み、人気も実力もつけてきたWEST.との15年ぶりの邂逅となる。映画主題歌はWEST.の「ウェッサイソウル!」。トータス松本がこの映画のために作詞作曲、ウルフルズがサウンドプロデュースした。 -
ウルトラマンアーク THE MOVIE 超次元大決戦!光と闇のアーク
制作年: 20252024年7月6日から2025年1月18日まで放送された円谷プロダクション制作による特撮テレビドラマ『ウルトラマンアーク』の劇場版。謎の宇宙人サスカルが告げた言葉によって、ある使命がユウマに襲いかかる。時空さえも歪められた超次元の中で、ユウマはウルトラマンアークに変身。黒いアークの姿をしたギルアークと、光と闇の大決戦を繰り広げる。テレビ版に続き、辻本貴則監督をはじめ、戸塚有輝、金田昇、水谷果穂、西興一朗といったスタッフ・キャストが再結集。謎の宇宙人サスカルを竹中直人が演じる。 -
マンガ家、堀マモル
制作年: 2024描けなくなった新人漫画家の前に、3人の幽霊が現れたことから巻き起こる出来事を綴ったファンタジー。新人賞を獲って以来、描きたいものがなくなり苦悩するマモル。そこに幽霊の海・樹・愛が現れ、彼らの話をもとにマモルは三篇の漫画を描き上げるのだが……。映画と漫画の連動企画、“CineComi”プロジェクト第1弾。映画と同名漫画の原作、そして映画主題歌「さよなら僕ら」を担当したのは、音楽活動を中心に、イラスト、エッセイを手掛けるseta。主演は「TOKYO,I LOVE YOU」の山下幸輝、監督は「栞」の榊原有佑、本作が初監督となる武桜子、「光はどこにある」の野田麗未の3人が務めた。 -
家出レスラー
制作年: 2024田舎でひきこもっていた少女がプロレスを観戦したことをきっかけに家出を決行、厳しい練習を経て女子プロレスのスターになるまでを描いたドリーム・ファンタジー。“女子プロレスのアイコン”である岩谷麻優選手の自伝的著書を原案に、「億男」の渡部辰城・脚本、「BIRTHDAY」のヨリコジュン・監督で映画化した。オーディションでグランプリを受賞した平井杏奈が主人公マユを演じ、女子レスラー陣は、ゆきぽよ、都丸紗也華、根岸愛、小坂井祐莉絵、平嶋夏海といったフレッシュな顔ぶれがそろった。また、竹中直人、有田哲平、石野真子、古坂大魔王ら、個性的なベテランが脇を固める。人生を諦めかけた人、一所懸命に生きることに疲れた人、何もかもが嫌になってしまった人、全ての人を元気にするプロレス青春映画。