星由里子 ホシユリコ

  • 出身地:東京都神田区鍛冶町の生まれ
  • 生年月日:1943年12月6日
  • 没年月日:2018年5月16日

略歴 / Brief history

東京都神田区鍛冶町(現・千代田区鍛冶町)の生まれ。幼時から宝塚に憧れて育ち、1958年、宝塚歌劇団の東京公演『ブロードウェイ・シンデレラ』にちなんで公募された“ミス・シンデレラ娘”に選ばれ、59年に東宝と専属契約。堀川弘通監督「すずかけの散歩道」の脇役で女優デビューする。モダンな美人でありつつ親しみやすい雰囲気が、当時の東宝の都会的カラーと合い、浜美枝、田村奈己と“東宝スリーペット”と名付けられて売り出される。「サラリーガール読本・お転婆社員」60に3人で主演したほか、サラリーマン喜劇を中心に多数出演。この年の製作者協会新人賞を受賞する。61年も「若い狼」など宝田明主演作で相手役をつとめ、松林宗恵監督の特撮大作「世界大戦争」、成瀬巳喜男監督「妻として女として」に出演と大活躍を見せるが、決定打は加山雄三主演の杉江敏男監督「大学の若大将」。加山扮する大学生・田沼雄一の恋人である中里澄子役を爽やかに演じる。映画は大ヒットしてシリーズ化され、68年の「リオの若大将」まで11本に出演して代表作とする。毎回役柄は異なるが“澄子”の名は変わらず、小さな誤解から雄一と距離が生まれて最後は清い愛を誓い合うパターンも不変。性格は大らかでスポーツ万能、歌とギターが堪能な雄一と明るく凛とした澄子のカップルは、若い観客の憧れとなる。加山の代表曲『君といつまでも』は第6作「エレキの若大将」65の主題歌で、劇中では雄一が澄子に捧げる曲として登場している。「若大将」シリーズで人気を決定づけつつ、62年の精華学園女子高校(現・東海大学付属望洋高校)卒業後は、東宝の看板女優としてますます多くの映画に出演。メロドラマでは主役を張り、鈴木英夫監督「旅愁の都」62で宝田と、千葉泰樹監督「河のほとりで」62では加山と共演する。また高島忠夫主演「乾杯!サラリーマン諸君」62のようなサラリーマンもの、「吼えろ脱獄囚」62などの男性アクション、「太平洋の翼」63では戦争映画と、あらゆるジャンルに出演して量産システムを支える。とりわけ重要なのが、64年の本多猪四郎監督「モスラ対ゴジラ」「三代怪獣・地球最大の決戦」における行動的な女性役で、リバイバル人気の極めて高い「ゴジラ」シリーズへの出演は「若大将」と並ぶ財産となる。健全なタイプキャストが定着する半面、どんな映画にも溶け込める演技力が評価されにくいタイブだったが、豊田四郎監督の純愛映画「千曲川絶唱」67で白血病の青年(北大路欣也)を献身的に愛する看護婦・奈美を熱演、ミリオン・パール賞を受賞する。68年頃からテレビドラマや舞台に出る機会が増え、映画も外部出演がメインになる。日活「忘れるものか」68で共演した石原裕次郎からは、村野鐡太郎監督の石原プロ作品「富士山頂」70に起用され、東映ではマキノ雅弘監督「日本俠客伝・花と龍」69などの高倉健の任俠映画に出演。両スターとの共演で闘う男を包み込む女の情を艶っぽく演じ、著しい成長を見せる。70年、実業家・横井英樹の子息と結婚するが、翌71年に離婚。劇作家・花登筐の舞台『じゅんさいはん』74に出演後、75年に花登と再婚する。以降は映画から一旦遠ざかるが、83年に花登と死別。杉村六郎監督「刑事物語3・潮騒の詩」84でスクリーンに復帰する。その後は大森一樹監督「恋する女たち」86、「わが心の銀河鉄道・宮沢賢治物語」96、渡邊孝好監督「エンジェル・僕の歌は君の歌」92、松山善三監督「虹の橋」93、磯村一路監督「雨鱒の川」03などに出演。舞台でも実績を重ね、北大路欣也共演の『佐渡島他吉の生涯』02で菊田一夫演劇賞を受賞する。NHK大河ドラマ『篤姫』08では篤姫の養母役・村岡を毅然と演じて評判を呼んだ。この間の90年に会社役員の男性と再々婚。「刑事物語3」で演じたのが、第1回“東宝シンデレラ”グランプリの新人・沢口靖子の母親役だったように、東宝時代へのオマージュが込められた起用が目立つのが復帰後の特長。94年のNHK『赤ちゃんが来た』では、加山雄三と26年ぶりの共演で初の夫婦役が話題となり、TBS『こちら本池上署』02~05では、高島忠夫の実子・高嶋政伸の姑役を明るく演じる。「ゴジラ」シリーズには手塚昌明監督「ゴジラ×メガギラス・G消滅作戦」00の科学者役で36年ぶりの出演を果たした。ファンからも作り手からもキャリアに敬意を払われ、変わらぬイメージを愛されている。2018年5月16日、肺がんのため京都市の病院で死去、享年74歳。

星由里子の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • 初恋 お父さん、チビがいなくなりました

    制作年: 2019
    長年連れ添った夫婦の秘めた想いと愛を描いた西炯子による人気漫画を実写映画化。人生の晩年を猫のチビと共に暮らす老夫婦の勝と有喜子。ある想いと寂しさをずっと抱えてきた有喜子は、ある日、娘に離婚話を切り出すが、そんな時、チビが突然姿を消してしまう。出演は「男はつらいよ」シリーズの倍賞千恵子、「龍三と七人の子分たち」の藤竜也、「シン・ゴジラ」の市川実日子。監督は「破門 ふたりのヤクビョーガミ」小林聖太郎。
    81
  • 校庭に東風(こち)吹いて

    制作年: 2016
    柴垣文子の同名小説を原作に、様々な問題を抱えた児童たちと、彼らと向き合う小学校教師の交流を描いたドラマ。教師の三木知世は、新しく赴任した小学校で、家では話せるのに学校では話せなくなる“場面緘黙症”の疾患を抱えた少女・蔵田ミチルと出会う。出演は『科捜研の女』シリーズの沢口靖子、『花子とアン』の岩崎未来。監督は「青いうた のど自慢 青春編」の金田敬。2016年9月3日より京都・イオンシネマ高の原を皮切りに全国順次公開。
  • イブの贈り物

    制作年: 2016
    “片思い”がテーマの短編作品を集めたオムニバス「全員、片想い」の一篇。ドラマやバラエティで活躍中の橋本マナミと『烈車戦隊トッキュウジャー』の横浜流星が主演する純愛ドラマ。美里が働く介護施設にやって来た介護士見習いの穣。入所者の老女と穣が親密になっていく中、二人を見守っていた美里は自らの変化に気付く。小説投稿サイト『E★エブリスタ』の投稿イベントから選出された電子小説を「男たちのかいた絵」「チャイ・コイ」の伊藤秀裕が映画化。共演は「若大将」シリーズや「わが心の銀河鉄道 宮沢賢治物語」の星由里子。
  • 浅草・筑波の喜久次郎 浅草六区を創った筑波人

    制作年: 2016
    明治から昭和にかけて浅草六区を近代日本最大の娯楽街に発展させた筑波出身の山田喜久次郎と、共に浅草六区を隆盛に導いた興行師・根岸浜吉の人生を、現代からタイムスリップしてきた若者の目を通して描く人間ドラマ。監督は、「ウルルの森の物語」の長沼誠。出演は、「バルトの楽園」の松平健、ドラマ『暴れん坊将軍』シリーズの北島三郎、ドラマ『泣かないと決めた日』の長谷川純、「東京PRウーマン」の戸井智恵美、「能登の花ヨメ」の水町レイコ、「利休」の田村亮。
    100
  • 釣りバカ日誌18 ハマちゃんスーさん瀬戸の約束

    制作年: 2007
    会長職に就任することになったスーさんが失踪したことからハマちゃんがわずかな手がかりを元に瀬戸内海へ向かうが、騒動に巻き込まれる、人気コメディ・シリーズ第20弾。監督は「釣りバカ日誌14 お遍路大パニック!」以降連続で手がけている朝原雄三。出演はレギュラーの西田敏行、三國連太郎のほかゲストに「武士の一分」の檀れい。
  • ひだるか

    制作年: 2005
    福岡県大牟田市出身の映像作家・港健二郎が、故郷の大牟田で体験した「三井三池争議」を題材に撮り上げた人間ドラマ。デジタル化の波が押し寄せる大きなうねりの中、ある女性キャスターの成長を描く。プロデューサー、監督、カメラマン以外は全て福岡、大牟田在住のスタッフでそろえた。