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  •  日活ロマンポルノは生誕50年をむかえました。それを記念して、「キネマ旬報」に過去掲載された記事の中から、ロマンポルノの魅力を様々な角度から掘り下げていく特別企画「あの頃のロマンポルノ」。キネマ旬報WEBとロマンポルノ公式サイトにて同時連載していきます。  今回は、先日世界三大映画祭の一つヴェネツィア国際映画祭にて「㊙︎色情めす市場」の4Kデジタル修復版の上映が発表された田中登監督についての北川れい子氏による「追悼 田中登監督」の記事を、「キネマ旬報」2006年12月下旬号 より転載いたします。  1919年に創刊され100年以上の歴史を持つ「キネマ旬報」の過去の記事を読める貴重なこの機会をお見逃しなく! 田中登が永遠に持ち去った次回作  こういう言い方は感傷に過ぎるのかもしれないが、1人の監督の死は、やがて作られたかもしれない傑作の、永遠の喪失に近いものがあるのではないだろうか。  新聞の片隅に載った田中登監督の詳報を目にしたとき、フトそんな思いが心を過ぎった。  10月4日、急性動脈瘤解離で逝去。享年69。  家族とふだん通り朝食をすませ、自室に入ったあと暫くして倒れたらしい。側に置かれていたTVドラマの脚本には多くの書き込みがあったという。「妖女伝説’88」(88年)以降、活躍の場はずっとドラマだった。  この話を通夜の席で、田中監督と日活同期入社(61年)の小沼勝監督からお聞きしたときの、心から無念の思いが伝わる口調が、あらためて田中監督の永遠の不在を実感させた。 ▲「人妻集団暴行致死事件」を演出中の田中登監督(左から2番目)  日活がロマンポルノ路線に踏み切ったのは71年11月で、その翌年の2月公開「花弁のしずく」で監督デビュー、続いて「牝猫たちの夜」「夜汽車の女」など、この年だけで5本の作品を撮る。 ▲「牝猫たちの夜」から  ロマンポルノがプログラム・ピクチャーだったことがデビュー年に5本という量を可能にしたのだったが、田中監督はその一作一作に超現実的な映像表現を盛り込み、時にはフェティッシュ、時には華麗、時には重厚、耽美的に、その作品世界のイメージをふくらませ、のち田中美学ともいわれたシュールな手法に挑んでいったのだった。  ビルから身を投げるホモ青年の体がビニール傘に置きかえられゆっくりと落ちていく「牝猫たちの夜」。死を寄り添わせた妖しくも忌まわしいイメージで、姉妹心中への道行きを描いた「夜汽車の女」。  田中監督は、当初、表現の解放区に近い状態にあったロマンポルノというフレームの中で、まさに水を得た魚のように、時代のエッセンスを敏感に取り込みながら、独自の映像センスに磨きをかけていくのだが、73年、大胆、かつ斬新な手法で「㊙女郎責め地獄」を撮る。日本映画監督協会新人奨励賞を受賞したこの作品は、中川梨絵が演じる百文女郎・死神おせんの、甘美で非情な性の地獄めぐりで、人形に見立てられたおせんが黒子に操られるなどの様式的演出がめくるめくほど美しく、映像の黒味の濃密度からしてただならぬものがあった。おせんが終盤に眩く「どこへ行こうとこの世は暗闇地獄」(脚本・田中陽造)という台詞の誇らかな潔さ。  そして74年、大阪・釜ヶ崎の若い娼婦(芹明香)を主人公にした「㊙色情めす市場」を地を這うようなリアリズムで撮る。通天閣から生きたニワトリが吊るされるこの作品のザラついた暗うつ感は、田中美学の入る余地もないほど重くささくれてアナーキーだった。 ▲「㊙色情めす市場」から  聞けばこの作品は、当初「受胎告知」というタイトルでATGで撮るはずだったとか。  実は長野県生まれの田中監督は、突然の不幸がなければ10月13日から松本市のエンギザで行われる自作の上映会でトークをすることになっていて、本人が選んだという6作品が並んだそのチラシには、「神戸国際ギャンク」の現場で菅原文太、高倉健と「人妻集団暴行致死事件」傑作中の傑作「実録 阿部定」(75年)と並んで『㊙︎色情めす市場「受胎告知」(原題)』とある。よほどのこだわりがあったのだろう。  ああ、それにしても「実録 阿部定」の何という女の性の勝利感。好きで好きでたまらない吉蔵(江角英明)と安宿にこもった定(宮下順子)は、兵士がうろつく世間を閉め出して性愛をむさぼったあげく、性戯のじゃれ合いで使っていた腰紐で吉蔵の首を絞め、男根を切断する。それを懐にしのばせた定は足尾銅山跡に立ち寄り、逮捕され車に乗せられても慌てず騒がず興味なさそうに、一重橋を一瞥するだけ。徹底的に無視される国家権力ー。  「田中さんは凝り性だったからなア」「うん、現場でいつも闘ってたね」とは、通夜の席で耳にした日活のかつてのスタッフらしい人の会話だが、実際、監督本人からその辺のことを聞いたことがあった。  04年にムック本『荷風!』の新宿特集の取材で、新宿が舞台の「牝猫たちの夜」「真夜中の妖精」(73年)、「ピンクサロン・好色五人女」(78年)などを通して、70年代の新宿の表情を語って頂いたのだが、1時間の予定が2時間半にも及んだその話は、当然、他の作品に話が広がり、中でも印象的だったのは、極寒の日光・戦場ヶ原でロケをした「発禁本「美人乱舞」より責める!」(77年)の現場。  深夜、監督はスタッフと2人で氷の、張った池にゴムの合羽姿で潜ってドラム缶を設置、翌日のロケではそこにぬるい湯が入れられたが、長嬬祥一枚の宮下順子はあまりの寒さに失神、撮影を終えて宿に帰ったら、「順子がね、監督、殺してやると泣きじゃくってんの(笑)。撮影で殺されるなら本望だね、僕は(笑)」。  そして痛烈な傑作「人妻集団暴行致死事件」(万年)。狭い浴槽で妻の遺体をかき抱く室田日出夫の哀しみは、性の聖なる儀式のようだった。 「次回作を考えない監督はいませんよ。確かに映画はずっと撮っていないが、いますぐにでも撮れるし、絶対に諦めない」パワフルな話し方がいまでも耳に残っている。そう、田中登監督は未完の傑作を持ち去って逝ったのだ。ただ口惜しい。 文・北川れい子 「キネマ旬報」2006年12月下旬号より転載 「日活ロマンポルノ50周年×キネマ旬報創刊100周年」コラボレーション企画、過去の「キネマ旬報」記事からよりすぐりの記事を掲載している特別連載【あの頃のロマンポルノ】の全記事はこちらから 日活ロマンポルノ50周年企画「みうらじゅんのグレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ」の全記事はこちらからご覧いただけます。 日活ロマンポルノ50周年新企画 イラストレーターたなかみさきが、四季折々の感性で描く月刊イラストコラム「ロマンポルノ季候」
  •  ファッションアイコンであり、永遠の妖精と呼ばれ、美の概念を変えた革新的なスターとして名声を得たオードリー・ヘプバーン。世界中から「愛された」彼女はしかし、実生活では愛される喜びを得られなかったものの、生涯をかけて「愛すること」を信じ、与えることを貫いた──。  名声に隠されたオードリーの本当の姿を捉え、彼女が今なお我々の中で生き続けるわけを解き明かす長編ドキュメンタリー映画「オードリー・ヘプバーン」が5月6日(金)より劇場公開される。     一人の女性としてのオードリーを描く  今なおその独自の流儀やライフスタイルは人々にインスピレーションを与え、時代を超えて愛される永遠の妖精オードリー・ヘプバーン。一世代に一人といわれた圧倒的な美貌を持ち、ハリウッド黄金期の伝説的スターと称された彼女が歩んできた、知られざる人生とは?  幼少期に経験した父親の裏切り、ナチス占領下のオランダという過酷な生育環境が植えつけたトラウマ、奪われたバレエダンサーへの夢、幾度の離婚……。貴重なアーカイブ映像と近親者インタビューで、これまで隠されてきたオードリーの一人の女性としての姿が描き出されていく。  さらに、育児のために女優業を休業するなど、子供たちへ深い愛情を注いでいたオードリー。晩年はユニセフ国際親善大使となり、慈善活動を通して大勢の人たちに癒しと救済をもたらした。本作では、リチャード・ドレイファスやピーター・ボクダノヴィッチ監督ら俳優時代の仲間、そして息子や孫、家族ぐるみの友人など、オードリーのプライベートを知る面々の声をふんだんに盛り込み、愛情と寛容の証として存在する、極めて特別なひとりの女性の姿を、鮮やかにスクリーンに甦らせている。 印象的なポスターと息子のコメントが到着  このたびポスタービジュアルが解禁。力強い眼差しのオードリーをアップで捉え、真っ白な背景に真っ赤なリップとタイトルが映えるデザインに仕上がった。  さらにオードリーと最初の夫であるメル・ファーラーとの息子、ショーン・ヘプバーン・ファーラー氏から、公開を祝したコメントが到着。 「私が多くの人に紹介したいのは一人の女性としてのオードリーの姿です。みんなと同じように不安や疑心を持っている生身の人間としての姿です。オードリーは自分のことを美しい人や特別な人というふうに見たことはありません。だからこそ彼女は人一倍努力をし、いつでもプロフェッショナルであり、みんなに優しい人でした」 「この素晴らしい作品はドキュメンタリー以上にオードリーの真実に迫り、伝記以上にオードリーの生涯を綴る、信念と愛情と思いやりの話です。彼女が目一杯生きた人生の話なのです」 と長文で綴ったその文面から、母への尊敬と愛情が感じられる。   ショーン・ヘプバーン・ファーラーのコメント全文 2019年5月に私の母、オードリー・ヘプバーンは90歳の誕生日を迎えるはずでした。このアニバーサリーのタイミングで私は「アイコン」「銀幕のスター」「伝説」という切り口でオードリーの核となる部分を描くプロジェクトを立ち上げました。 私が伝えたいのは一人の女性としてのオードリーの姿です。みんなと同じように不安や疑心を持っている生身の人間としての姿です。オードリーは自分のことを美しい人や特別な人という風に思ったことはありませんでした。だからこそ、彼女は常に努力をし、いつでもプロフェッショナルであり、誰に対しても優しい人でした。 最初のプロジェクトはオードリーの展覧会「Intimate Audrey」(2019年ヨーロッパで開催)でした。私たちはこの展覧会を彼女の考えや哲学を中心に構成し、オードリーを一人の人間として見せました。さらに展覧会カタログの代わりとなるような本として、オードリーの人生を綴った絵本「リトル・オードリーのデイドリーム(原題:Little Audrey’s Daydream)」を制作しました。この本は現在英語版が世界各国で出版されていて、日本語版はあかし出版から出ています。 もう一つのプロジェクトはドキュメンタリー映画「オードリー・ヘプバーン」です。プロデューサーのニック・タウシグとこの件について話し合ってすぐに、私たちが描きたいオードリーの物語がピタリと一致しました。この作品はオードリーをよく知る人たちが語る、一人の女性の人生の真実です。 一人の女性としての彼女の本当の姿を知る人や、彼女の人生の酸いも甘いも両方知る人。 ニックが本作の海外セールスに辺り良いパートナーを探していると聞いた時、日本のパートナーとして東北新社に連絡しました。彼らとは50年間、私たちのエージェントとして関係を築いてきました。彼らに本作を託すということは、家族にバトンを渡すような感覚でした。 私は様々なところで「なぜ、オードリーは今でも世界中で愛されているのか」という質問を受けます。これについて私もずっと考えていました。そしてたどり着いた答えは、私たちがオードリーを「自分たちと同じ一人の人間」として身近に感じてられるから。数多くのハリウッドスターとオードリーが違うのは、彼女は身一つで海を越え、シンプルな黒のドレスだけでこの世界へ飛び出してきたことです。だからこそ、私たちはオードリーを応援したくなるのです。  この作品を通して、皆さんが出会い、知っていく女性はこのような人物なのです。 この素晴らしい作品はドキュメンタリー以上にオードリーの真実に迫り、伝記以上にオードリーの生涯を綴る、信念と愛情と思いやりの物話です。彼女がめいいっぱい生きた人生の物話なのです。 この作品はオードリー・ヘプバーンを語る上で欠かせない新たな「クラシック」になるでしょう。優しさと愛情はなによりも勝るという安心感を求めたい時、人々は雨が降る日曜の午後にふとオードリーの作品を観返すのと同じように、きっとこの作品を何度も観たくなることでしょう。   「オードリー・ヘプバーン」 監督:ヘレナ・コーン 出演:オードリー・ヘプバーン、ショーン・ヘプバーン・ファーラー(オードリーの長男)、エマ・キャスリーン・ヘプバーン・ファーラー(オードリーの孫)、クレア・ワイト・ケラー(ジバンシィの元アーティスティックディレクター)、ピーター・ボクダノヴィッチ、リチャード・ドレイファス 振付:ウェイン・マクレガー バレエダンサー:アレッサンドラ・フェリ、フランチェスカ・ヘイワード、キーラ・ムーア 100分/2020年/イギリス/5.1ch/ビスタ 字幕翻訳:佐藤恵子 原題:“Audrey” 配給:STAR CHANNEL MOVIES © 2020 Salon Audrey Limited. ALL RIGHTS RESERVED.
  •  日活株式会社製作、1974年劇場公開の田中登監督ロマンポルノ作品『㊙色情めす市場』(まるひしきじょうめすいちば)4Kデジタル復元版が、発表・開催が延期となっていた第78回ヴェネツィア国際映画祭のクラシック部門(ヴェニス・クラシックス)に選出され、現地で2月10日から5月26日まで開催される映画祭「CLASSICI FUORI MOSTRA 2022」において5月12日に上映されることが決定しました。   「ヴェニス・クラシックス」は2012年に設立されたヴェネツィア国際映画祭の一部門で、世界の映画関係者によって過去1年間に復元されたクラシック作品の中から、特に優れた作品が選出され、上映されます。日本映画はこれまでに『七人の侍』(黒澤明監督)、『お茶漬けの味』(小津安二郎監督)、『山椒大夫』(溝口健二監督)、『無法松の一生』(稲垣浩監督)、『復讐するは我にあり』(今村昌平監督)など、名だたる巨匠の作品の復元版が選出されています。  昨年9月にヴェネツィア国際映画祭が開催された際には、新型コロナウィルスの感染拡大により、クラシック部門の選出作品の発表や開催が延期される事態となっていました。しかしこの度、ヴェネツィア国際映画祭と主催団体を同じにするクラシック作品の映画祭CLASSICI FUORI MOSTRAが2月よりヴェネチアで開催されることが決定。昨年のヴェニス・クラシックスに選出された作品も満を持して発表され、CLASSICI FUORI MOSTRAの中で上映されることになりました。『㊙色情めす市場』は「1970年代の日本のピンク映画の中で最高傑作の1つ」と紹介されています。  ヴェニス・クラシックスにおける日活作品の選出は今回が初めてで、日活ロマンポルノ作品の世界三大映画祭での選出も今回が初となります。  『㊙色情めす市場』はロマンポルノを代表する監督の1人、田中登の代表作。公開時、一般映画も含めた「映画芸術」誌ベストテンで第3位にランクイン。大阪・釜ヶ崎を舞台に、たくましく生きる人々の姿を描いた映画史に残る傑作。約1,100本あるロマンポルノ作品の中で最高傑作とする映画人も多く、特に愛されてきた一作です。   【田中登(たなか・のぼる) 1937年8月15日-2006年10月4日】 長野県白馬村生まれ。 明治大学文学部に在学中、黒澤明監督『用心棒』などの作品にアルバイトとして参加する。1961年、大学卒業後に助監督として日活に入社。同期には小沼勝、結城良煕、小原宏裕がいる。 助監督として鈴木清順、今村昌平、西河克己、舛田利雄、小澤啓一をはじめ日活在籍監督の多くにつき経験を積み、日活がロマンポルノに転向後、1972年『花弁のしずく』で監督デビュー。当初より、色彩感覚や風景描写、シュールなモンタージュなど独特のセンスを発揮し高い注目を集め、7作目の『㊙女郎責め地獄』(1973年)で日本映画監督協会新人奨励賞を受賞。その後も『㊙色情めす市場』(1974年)を始めとする傑作を次々に発表し、日本映画界に衝撃を与えた。『実録阿部定』(1975年)、『江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者』(1976年)、『人妻集団暴行致死事件』(1978年)は、キネマ旬報ベストテンに選出され、日活ロマンポルノにおけるエース監督としての地位を確立。また、東映に招聘され『神戸国際ギャング』(1975年)、『安藤昇のわが逃亡とSEXの記録』(1976年)の監督をつとめつつ、ロマンポルノ作品も引き続き発表した。1980年代以降は、2時間ドラマを中心にテレビ作品へと活躍の場を拡大し、映画と並行して数多くのテレビドラマ作品を手掛けた。 強いこだわりを持って作品を作り上げる姿勢を貫き、生涯で25本の映画と78本のテレビ作品を残した。日活ロマンポルノを象徴する監督の一人である。 【フィルモグラフィ】 花弁のしずく(1972)/ 牝猫たちの夜(1972)/ 夜汽車の女(1972) /好色家族 狐と狸(1972)/ 官能教室 愛のテクニック(1972)/ 昼下りの情事 変身(1973)/ ㊙女郎責め地獄(1973)/ 真夜中の妖精(1973)/ 女教師 私生活(1973)/ ㊙色情めす市場(1974)/ 実録阿部定(1975)/ 神戸国際ギャング(1975)/ 江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者(1976)/ 安藤昇のわが逃亡とSEXの記録(1976)/ 発禁本「美人乱舞」より 責める(1977)/ 女教師(1977)/ 人妻集団暴行致死事件(1978)/ ピンクサロン 好色五人女(1978)/ 天使のはらわた 名美(1979)/ 愛欲の標的(1979)/ハードスキャンダル 性の漂流者(1980)/ もっと激しくもっとつよく(1981)/ 丑三つの村(1983)/ 蕾の眺め(1986)/ 妖女伝説’88(1988) 【ロマンポルノとは】 1971年-88年の間に製作・公開された成人映画で、『団地妻 昼下りの情事』(西村昭五郎監督/白川和子主演)と、『色暦大奥秘話』(林功監督/小川節子主演)が第1作。わずか17年の間に約1,100本公開された。 一定のルール(「10分に1回絡みのシーンを作る、上映時間は70分程度」など)さえ守れば比較的自由に映画を作ることができたため、クリエイターたちは限られた製作費の中で新しい映画作りを模索。そして、キネマ旬報ベストテンや日本アカデミー賞に選出される作品や監督も生まれた。 また、通常3本立ての公開を維持するため量産体制を敷いたことにより、若い人材が育成された。中平康、鈴木清順、今村昌平ら稀代の才能をもつ監督のもと助監督として経験を積み、ロマンポルノの中で作家性を発揮した監督として、神代辰巳、小沼勝、加藤彰、田中登、曾根中生らが生まれ、あらゆる知恵と技術で「性」に立ち向い、「女性」を美しく描くことを極めた。 ロマンポルノから出発した監督には他にも村川透、相米慎二、根岸吉太郎、池田敏春、中原俊、那須博之、金子修介、石井隆などがいる。80年代に入り家庭にビデオデッキが普及し、アダルトビデオが低料金でレンタルできるようになると、日活ロマンポルノの劇場に足を運ぶ人は次第に減り、1988年4月、日活はロマンポルノの製作を終了すると発表。 トリュフォーが神代の『四畳半襖の裏張り』を観て感嘆したとか、ニューヨークでの神代の特集上映が満席だったなど、ロマンポルノで活躍した監督たちの回顧上映などが、国内海外で、現在も頻繁に行われている。   【第78回 ヴェネツィア国際映画祭について】 イタリアのヴェネツィアで開催される映画祭。今回は現地9月1日~11日に開催された。世界三大映画祭の一つで、コンペティション部門を含む複数の部門からなる。前回コンペティション部門に出品された黒沢清監督『スパイの妻』が最高賞に次ぐ銀獅子賞を受賞し、大きな話題を呼んだ。第78回となる今回は、日本から湯浅政明監督『犬王』がオリゾンティ部門で上映されたが、新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受け、クラシック部門の選出作品の発表と開催は延期となっていた。 ヴェニス・クラシックス 2012年に設立されたヴェネツィア国際映画祭の一部門で、世界の映画関係者によって過去1年間で復元されたクラシック作品の中から、特に優れた作品が選出され、ワールドプレミア上映される。日本映画はこれまでに『七人の侍』(黒澤明監督)、『お茶漬けの味』(小津安二郎監督)、『山椒大夫』(溝口健二監督)、『無法松の一生』(稲垣浩監督)、『復讐するは我にあり』(今村昌平監督)など、名だたる巨匠の作品の復元版が上映されており、同部門における日活作品の選出は今回が初めて。また、日活ロマンポルノ作品としても三大映画祭での選出は今回が初となる。今回選出された他の作品にウィリアム・フリードキン監督『フレンチ・コネクション』などがある。 CLASSICI FUORI MOSTRA(日本語読み:クラシッチ・フォーリ・モストラ) 2020年からヴェネチアで開催されている、復元映画の映画祭。今年は現地2月10日から5月26日に開催される。主催はヴェネツィア国際映画祭と同じくヴェネツィア・ビエンナーレで、同団体映画部門の代表であり、ヴェネツィア国際映画祭のディレクターも務めるアルベルト・バルベーラ氏が中心となって発足した。ヴェニス・クラシックスの盛況を受け、映画史に名を刻んだ過去の名作を更に多く観客に届けると同時に、現在活動している映画製作者にインスピレーションを与え続けることを目的に設立された。また、名作映画の上映を通じて学生に教育的な豊かさを提供することも目的の1つとしている。 毎年10数作品が上映され、今回は14作品が上映される。過去の上映作品に『エイリアン』(リドリー・スコット監督)、『グッドフェローズ』(マーティン・スコセッシ監督)、『地下水道』(アンジェイ・ワイダ監督)等がある。第2回となる昨年は、パンデミックの影響を受けて急遽ボローニャでの開催となった2020年のヴェニス・クラシックス選出全13作品が上映され、邦画では『無法松の一生』(稲垣浩監督)と『復讐するは我にあり』(今村昌平監督)が含まれた。なお、設立以降続く新型コロナウィルスの影響により、開催時期・会場は年によって異なる。  【作品情報 『㊙色情めす市場』 】  「うちな、なんや、逆らいたいんや…」 ロマンポルノの名匠・田中登が、大阪・釜ヶ崎を舞台に、 ともに娼婦として生きる母と娘を通して、生と性に切り込んだ孤高の傑作! 19歳のトメは、組織に入らず、ドヤ街の近くで客を引くフリーの娼婦。店やヤクザから組織に入るよう言われても、頑として従わない強気だが、知的障がいのある弟には限りなくやさしい。同じ娼婦である母との諍い、指名手配犯にそっくりの男や駆け落ちしてきたカップルとの出会いと別れ、そして弟の出奔を通して、トメが決意した覚悟とは…。ドヤ街で隠し撮りしたドキュメンタリーのような生々しい映像、トメを演じる芹明香の圧倒的な存在感、モノクロからカラーへ転調する爆発力が、見る者すべてに鮮烈な印象を焼きつける映画史に残る傑作。 監督:田中登  脚本:いど あきお 撮影:安藤庄平 照明:新川真 録音:木村瑛二 編集:鍋島惇 美術:川崎軍二 音楽:樋口康雄 出演:芹明香 花柳幻舟 宮下順子 絵沢萠子 夢村四郎 萩原朔美 高橋明 岡本章 坂本長利 小泉郁之助 榎木兵衛 島村謙次 小林亘 中平哲仟 清水国雄 荻原実次郎 庄司三郎  1974年/83分/パートカラー   ©日活 【4Kデジタル復元版について】 日活株式会社が所蔵する35㎜マスターネガを素材として、2021年にデジタル復元を行ったもの。 復元:日活株式会社 デジタル修復:シネリック  「日活ロマンポルノ50周年×キネマ旬報創刊100周年」コラボレーション企画、過去の「キネマ旬報」記事からよりすぐりの記事を掲載している特別連載【あの頃のロマンポルノ】の全記事はこちらから 日活ロマンポルノ50周年企画「みうらじゅんのグレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ」の全記事はこちらからご覧いただけます。 日活ロマンポルノ50周年新企画 イラストレーターたなかみさきが、四季折々の感性で描く月刊イラストコラム「ロマンポルノ季候」
  • 「プロのライターが選ぶ、2021年の“推し”ネトフリ韓国ドラマ10作!〈前編〉」 今年もNetflixにて話題の韓国ドラマがたくさん配信されていますが、まだ昨年の人気シリーズをチェックしきれていないという方も多いはず。そこで今回は、2021年にNetflixで配信された韓国ドラマから、プロのライターが選んだ厳選10作をプロのライターのコメントと共に一挙紹介します! 【こちらでは前半5作を紹介します】                  1. 世界中を熱狂させたサバイバルドラマ『イカゲーム』 Netflixシリーズ『イカゲーム』独占配信中   『イカゲーム』の作品紹介 Netflixで配信されると、あっという間に世界中で人気を博したサバイバルドラマ。金銭的に崖っぷちに立たされた人々の元に、ある日突然届く謎のゲームの招待状。集まった456人の参加者は、悲惨な現状から抜け出すため賞金456憶ウォンの獲得を目指し、幼い頃遊んだゲームを連想させる“命懸けのサバイバルゲーム”に挑む。「トガニ 幼き瞳の告発」などのファン・ドンヒョク監督がメガホンをとり、名優イ・ジョンジェが主演、その他豪華なカメオ出演も見どころ。   『イカゲーム』のライターおすすめコメント デスゲームで消えるのは誰か。無慈悲な順序は社会のピラミッドを映し出す。 映画監督がドラマに進出し世界を席巻した点も韓国の今を象徴する逸品。(桑畑優香氏)   2. 海辺の町で出会う正反対の2人のロマコメ『海街チャチャチャ』 Netflixシリーズ『海街チャチャチャ』独占配信中   『海街チャチャチャ』の作品紹介 都会を離れ海辺の町で開業した歯科医と、できないことなど何もない“万能ニート”の青年。すべてにおいて正反対な2人は、何かにつけて衝突してばかりだったが、いつの間にかお互いの存在を意識するようになり、特別な感情を抱いていく。のどかでフォトジェニックな港町を舞台に、個性豊かな登場人物たちが巻き起こすドタバタの中で垣間見えていく、それぞれが抱える過去や心境に胸が締め付けられる。価値観の違う2人が少しずつ想いを通わせていく様に、中毒者が続出したラブコメの決定版。   『海街チャチャチャ』のライターおすすめコメント シン・ミナとキム・ソンホの笑顔に癒され、コンジンに暮らす人々の温かさに救われる。 毎回見終わったら幸せな心持ちになれる。これぞ一服の清涼剤。(前田かおり氏)   3.超常現象とカルト宗教が民衆を支配するホラー『地獄が呼んでいる』 Netflixシリーズ『地獄が呼んでいる』独占配信中 『地獄が呼んでいる』の作品紹介 大ヒット映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」の監督が、ウェブトゥーン原作を映像化したホラードラマ。この世のものではない“何か”が突然現れ、宣告を受けた人間たちを地獄へと突き落とすという世にも恐ろしい超常現象とサスペンスフルな展開で観る者を引き込む。その不可思議な現象を、神の裁きだと主張するカルト宗教団体のリーダー演じる実力派俳優のユ・アインが、圧倒的な存在感を見せながら人々の不安を煽動し、事件の実態を暴こうとする人々と絡み合っていく。   『地獄が呼んでいる』のライターおすすめコメント 「新感染~」の系譜を継ぐ世紀末感溢れる映像が秀逸な、ヨン・サンホ監督作。 逃れられない死と混沌の人間世界を描く、主題の深さに引き込まれます。(佐々木朋美氏)   4. 脱走兵を追う軍人が見た絶望を描く社会派ドラマ『D.P. -脱走兵追跡官-』 Netflixシリーズ『D.P. -脱走兵追跡官-』独占配信中   『D.P. -脱走兵追跡官-』の作品紹介 鋭い洞察力を評価され、脱走兵を捕まえるD.P.に配属されることになった二等兵のアン・ジュノとその相棒が脱走兵を追跡する中で、軍を離脱するしかなかった青年たちの苦悩と向き合っていく社会派ドラマ。軍隊内の組織「D.P.」の視点から韓国軍隊の問題点を描いたウェブトゥーンが原作で、作者の実話もモチーフになっていることで重みのあるストーリーでありながら、主演のチョン・へインとク・ギョファンのバディ感が物語に爽快さを与えている。   『D.P. -脱走兵追跡官-』のライターおすすめコメント 舞台設定は2014年。リアルな事件をモチーフにバディもの、ひりひりするエンタメ作と捉えていたら、頭をがつんと殴られた。「傍観者」は私のことでした。(杉本真理氏)   5. バレリーノを目指す老人と若者の勇気の物語『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』 Netflixシリーズ『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』独占配信中   『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』の作品紹介 踊りに夢を見いだした70歳の老人と、才能あふれる23歳の青年が出会い、厳しい現実に直面しながらもバレリーノを目指し、やがて2人の間に強い絆が芽生え始める。Netflixオリジナルシリーズ『Sweet Home-俺と世界の絶望-』の主演で一躍注目を浴びた俳優ソン・ガンが、本作では若くして才能はありながらもくすぶっているバレエダンサーを演じる。第二の人生の中でかつての夢を追いかける老人と交差する若者の物語が、観る者に勇気と癒しを与えるヒューマンドラマ。   『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』ライターのおすすめコメント 若者ではなく老人が夢を追うという設定が素晴らしい。そのひたむきな姿はとても美しく、 物事を始めるのに年齢は関係ないと改めて気付かされる作品。(北直美氏)   いかがでしたか? 見逃した作品があれば、この機会にぜひNetflixでチェックしてみてください! 来週(2月17日アップ予定)は、後半5作をご紹介します。お楽しみに! →「プロのライターが選ぶ、2021年の“推し”ネトフリ韓国ドラマ10作!〈後編〉」はこちら   制作=キネマ旬報社 ※本文は、「韓国テレビドラマコレクション2022」から一部を抜粋したものです。 無断転載禁止。    
  •  童貞のまま30歳の誕生日を迎えたことで“触れた人の心が読める魔法”を手に入れた安達(主演・赤楚衛二)と、彼に好意を抱く会社の同期の黒沢(町田啓太)。そんなふたりの“好意丸見えの純度100%ラブコメディ”『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(通称「チェリまほ」)が、映画になってカムバック、4月8日(金)に公開される。 魔法の扉が再び開く!  シリーズ累計180万部突破の豊田悠原作のコミックをドラマ化した「チェリまほ」は、一昨年10月期に放送され(テレビ東京系列/木ドラ25枠・全12話)、そのあまりにもピュアなストーリー展開と登場人物たちの愛らしいキャラクター像がSNS上で話題をさらい、回を追うごとにファンが激増。放送直後は“チェリまほ”が日本・タイ・韓国・ベトナムなどでトレンド入りし、今や200以上の国や地域で見られるほどワールドワイドに。さらに、5週連続ORICONドラマ満足度調査ランキング1位達成、ギャラクシー賞「月間賞」「マイベストTV賞第15回グランプリ」受賞、ザテレビジョンドラマアカデミー賞の最優秀作品賞受賞を果たすなど、ドラマ界の賞を総なめにした。最終回放送後は大反響と共に“チェリまほロス”の声が相次ぎ、動画配信サービス「TSUTAYAプレミアム/TSUTAYA TV」の見放題作品で歴代最高視聴数を記録するなど社会現象に。そんな「チェリまほ」が「チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~」として映画化&劇場公開されることが発表されると、たちまちトレンド1位を獲得、その熱は高まる一方だ。     本ビジュアルはスーツ&部屋着のふたり  このたび本ビジュアル、ストーリー、新キャスト、書き下ろし主題歌・挿入歌の情報が解禁。  本ビジュアルで描かれるのは、オフィスで再び黒沢の心に耳を傾けようと寄り添う安達と、部屋着でくつろぐふたりという、2通りのシチュエーション。ドラマでハッピーエンドを迎え、恋人となったふたりの一歩進んだ世界を映画版では見せてくれそうだ。  気になる新キャストは、安達が転勤する長崎支社の同僚役に松尾諭、安達と黒沢の両親役に遠山俊也と榊原郁恵、鶴見辰吾と松下由樹が決定。  映画版主題歌・挿入歌は、ドラマでも大好評だったアーティスト2組が続投。ドラマ版オープニングテーマ「産声」のOmoinotakeは、映画版主題歌「心音」を、ドラマ版エンディングテーマ「Good Love Your Love」のDEEP SQUADは、映画版挿入歌「Gimme Gimme」をそれぞれ書き下ろす。音源リリースは続報を待ちたい。   Story 晴れて恋人となり、魔法がとけてハッピーエンドを迎えたように思われたドラマのエンディングだったが、映画ではなぜかまだ魔法が使えていて…? 社内恋愛も順調な幸せな日々の中、安達に転勤の話が舞い込む。やりたい仕事ができるチャンスに喜ぶ安達だったが、転勤先ははるか1200km離れた長崎だった。転勤話をめぐり、互いを想うがゆえにすれ違ってしまう安達と黒沢。そして、遠距離恋愛をきっかけにふたりは未来について考え始め…。はたして、この恋どうなる!?   「チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~」 出演:赤楚衛二、浅香航大、ゆうたろう、草川拓弥(超特急)、佐藤玲、鈴之助、松尾諭/遠山俊也、榊原郁恵、鶴見辰吾、松下由樹/町田啓太 (※榊原さんの「榊」は正しくは「木」へんに「神」) 原作:豊田悠「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」(掲載「ガンガンpixiv」スクウェア・エニックス刊/コミックス1~8巻絶賛発売中) 監督:風間太樹 脚本:坂口理子 プロデューサー:本間かなみ、井原梓、熊谷理恵 製作:『チェリまほ THE MOVIE』製作委員会 制作プロダクション:ラフ・アット 配給:アスミック・エース ©豊田悠/SQUARE ENIX・「チェリまほ THE MOVIE」製作委員会 公式サイト:https://cherimaho-movie.com 公式twitter : @tx_cherimaho 公式Instagram:@cherimaho_movie