サイレント期の天才を紐解く「NOBODY KNOWS チャーリー・バワーズ –発明中毒篇–」
- チャーリー・バワーズ , NOBODY KNOWS チャーリー・バワーズ –発明中毒篇–
- 2022年06月21日
サイレント映画の “無垢なる発明家” チャーリー・バワーズが監督・主演した1920年代のサイレント映画4作品+キャリア初期の短編アニメーション2作品をオリジナル伴奏付きで上映する「NOBODY KNOWS チャーリー・バワーズ –発明中毒篇–」が、9月17日(土)より渋谷ユーロスペースほかで全国順次スタート。
サイレント時代末期に生み落とされた、モダンでパンク、シュルレアリスティックでクレイジーなチャーリー・バワーズの作品群。ストップモーション・アニメーションと実写が融合(“バワーズ・システム”と名付けられている)した奇想天外な映像世界、そしてバワーズが覗かせる喜劇王バスター・キートンのような憂愁と狂気は、驚きと笑い、時に恐怖さえもたらす。アンドレ・ブルトンやクエイ兄弟など数々の芸術家を魅了したバワーズだが、実態は謎のまま。これほどの異能が、なぜ歴史に埋もれてしまったのか?
そんな、自分の存在すら煙に巻いてしまった斜め上の天才バワーズの世界が、いよいよ劇場で紐解かれる。
装置やオブジェクトに対するチャーリー・バワーズのフェティッシュな執心が、映画に魔力と狂気をもたらす。想像力の産物が、駒撮りによって実存化し、ライブアクションとの共存によって映像が生き生きと動き出す。まさに活動写真(Animated Picture)! 映画史に忘れられたナンセンスをやっと堪能できる日が来て、とても興奮しています。
──山村浩二(アニメーション作家)
チャーリー・バワーズ
もしかすると、まれなる変人映画監督を発掘したのではないでしょうか?
次から次へと溢れるアイデア。
アイデアを具現化するために、技術と技術の合せ技をやってのけるわけですが、なぜか漂うホームメイド感。
世界中で動く写真に夢中になっていた時代のおおらかさを垣間見ることが出来る貴重な作品群。
映画は20世紀の賜物なのだ。
1920年代にタイムスリップしてオンタイムで見てみたい。
──井口奈己(映画監督)
【上映作品】
「たまご割れすぎ問題」
ある日「たまごの殻が割れやすいのはおかしい!」と気づいてしまった、しがない発明家バワーズ。まさかの着眼点から(まったく仕組みのわからない)“割れないたまご製造機” を発明してひと山あてようと大奮闘する。記念すべき実写映画第一作。
(原題:EGGED ON|1926年|23分)
「全自動レストラン」
これが本当のロボットレストラン!? 愛する女性の父が経営する店を訪ね、結婚の承諾を得るはずが求人と誤解されたバワーズは……。まさにマシン・エイジならではの作品で、巨大機械を駆使してレストランの全作業を賄うワンオペの最終形態。
(原題:HE DONE HIS BEST|1926年|23分)
「ほらふき倶楽部」
バワーズ再発見のきっかけとなった重要作。さる紳士に “ほらふきチャンピオン大会” へ招かれたのは、人生に絶望した若き発明家。万物が実る木を発明した彼の身に起きた “真実” とは、はたして……? ガンマンねずみ vs 無限猫の仁義にゃきバトルも必見!
(原題:NOW YOU TELL ONE|1926年|21分)
「怪人現る」
幽霊屋敷もののパロディで、アニメーションと実写がスピーディーに融合する怪作。「ひげの怪人」捜査のためスコットランド・ヤード(?)の探偵バワーズが相棒の謎生物マックと海を渡る。バワーズ屈指のハイパー・ナンセンス・ドタバタ劇に、ついて来れるか!?
(原題:THERE IT IS|1928年|22分)
伴奏音楽:塩屋楽団 + Solla[稲田誠(contrabass, electric bass)鈴木勝(electric guitar)森本アリ(sampler, gameboy, jews harp)山本信記(synthesizer, trumpet)Solla(piano, organ, andes25f)]
*無声映画に、2021年に新規録音した伴奏音楽を付けて上映。
「とても短い昼食」(原題:THE EXTRA-QUICK LUNCH|1917年|6分)
「オトボケ脱走兵」(原題:A.W.O.L. or ALL WRONG OLD LADDIEBUCK|1918年|6分)
バワーズ工房による制作が確認されている人気カートゥーン「マット&ジェフ」シリーズの1本と、新聞漫画家出身のバワーズらしい風刺の利いたアニメーション。
チャーリー・バワーズ Charley Bowers(1889頃-1946/米国アイオワ州出身)
伯爵家の血筋で、5歳で綱渡りをマスターし6歳でサーカス一座に誘拐された(本人談)。
カートゥーン「マット&ジェフ」のアニメーターを経て、自身が主演する無声短篇映画の制作をスタート。長く忘れられていたが、1960年代にフランスで発見されたのを皮切りに、眠っていたフィルムが世界各地で発掘される(今回上映する4作品のうち3本はフランス語版)。21世紀に入り現存する作品のデジタル修復が行われた。
配給:プラネット映画保存ネットワーク 提供:Lobster Films
公式サイト:https://kobe-eiga.net/nonobowers