〈中央アジア今昔映画祭2022〉開催、色とりどりの世界へ誘う新旧7作!
- 中央アジア今昔映画祭2022 , 白い豹の影 , 小さなアコーディオン弾き , 右肩の天使 , ゆすり屋 , 南の海からの歌 , 狼と羊 , 不屈
- 2022年10月28日
ソビエト連邦解体・中央アジア5カ国の独立から30年の節目となった昨年12月に初めて行われた〈中央アジア今昔映画祭〉が、今年も開催。中央アジアのカザフスタン、キルギス(クルグズスタン)、タジキスタン、ウズベキスタン、およびこれらの国と繋がりの深いアフガニスタンの新旧7作(2作は日本初公開、4作は日本劇場初公開)を、12月に全国のミニシアター8館(ユーロスペース、フォーラム仙台、横浜シネマリン、名古屋シネマテーク、出町座、第七藝術劇場、元町映画館、横川シネマ)で上映する。
中央アジアはカザフスタン、キルギス(クルグズスタン)、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンの5カ国が該当。中国の新疆ウイグル自治区とは不可分の関係にあり、タタルスタンやバシコルスタンといったロシアのムスリム地域、およびアフガニスタンとも繋がりが深い。
東アジアと西のイスラーム・西欧世界の交点にあった中央アジアは、テュルク系遊牧集団による征服やイスラーム化といった歴史を経て、複雑に文化が交わる場所として長い道のりを歩んできた。20世紀は長くソビエト連邦の構成国として社会主義体制をとってきたが、1991年のソ連解体と前後して5カ国は独立を果たす。
そして現在、北のロシアはウクライナへ侵攻し、南のアフガニスタンでは国内勢力が伸張。不安定な国家に挟まれた中央アジアの動向に、大きな関心が寄せられている。今回の映画祭は、そうした中央アジアの多様な世界観を映画で追っていく。
〈上映作品〉
「白い豹の影」
監督・脚本:トロムーシ・オケーエフ
脚本:マル・バイジエフ
出演:ドフドゥルベク・クィドィラリエフ、アリマン・ジャンゴロゾワ、ドスハン・ジョルジャクスィノフ、アシル・チョクバエフ
ソ連/1984年/ロシア語、キルギス語/カラー/128分/原題:Potomok Belogo Barsa
第35回ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞。峻険な岩山に住む白豹族の一代記を大迫力で描く。「キルギスの奇跡」と呼ばれるキルギス映画黄金時代を牽引した巨匠、トロムーシ・オケーエフの代表作。
【story】古来より余計な殺生をせず暮らしてきた白豹族。獲物が捕れなかった冬、コジョジャシは命がけで山を越え、麓の一族に助けを乞う。そして夏、返礼の場で頭首の妻アイカと出会い、ふたりは愛し合ってしまう。その後、襲撃してきた遊牧民を撃退したコジョジャシは、銃を手に入れ、一族の誓いを破る……。
「小さなアコーディオン弾き」※日本劇場初公開
監督・脚本:サティバルディ・ナリィムベトフ
脚本:イズトゥレ・イスマガンベトワ
出演:ライハン・アイトコジャノワ、バクィトジャン・アルペイソフ、ダウレト・タニエフ、ペーチャ・ハイトヴィチ
カザフスタン/1994年/カザフ語、ロシア語/カラー・モノクロ/87分/原題:Kozymnin Karazy
第二次世界大戦後間もない、日本人捕虜が働くカザフの小さな炭鉱町が舞台。カザフ人、ロシア人、ユダヤ人、日本人が混在する町で成長する少年の目を通して、人々や社会を瑞々しくユーモア豊かに描いたラプソディ的傑作。
【story】アコーディオン弾きの少年エスケンは、母親にべったりの甘えん坊だが、映画の盗み見や娼婦の商売の覗き見、友人たちとの悪さもしている。町にやって来たばかりのユダヤ人、ユーラとはすぐ親友になった。エスケンと両親は日本人捕虜とも仲良く付き合っていたが、ある日、事件が起きる……。
「右肩の天使」※日本劇場初公開
監督・脚本:ジャムシェド・ウスモノフ
出演:ウクタモイ・ミヤサロワ、マルフ・プロドゾダ、コワ・チラヴプル、マルドンクル・クルボボ
タジキスタン、スイス、フランス、イタリア/2002年/タジク語/カラー/89分/原題:Farishtai kitfi rost
第3回東京フィルメックス審査員特別賞受賞。タジキスタンの俊英ジャムシェド・ウスモノフ(「天国へ行くにはまず死すべし」)の代表作。借金まみれの放蕩息子と彼を思う老母が巻き起こす騒動を、マジックリアリズム的な世界観で描く。
【story】家の入口が狭くて自分が死んだ時に棺が通れないことを憂いているハリマは、息子ハムロに修繕させようと、危篤のふりをする。ロシアの刑務所を出て帰郷したハムロは、値切り倒して工事を進めるが、追ってきた借金取りに殴られたあげく、お前の子だと押し付けられた少年を世話することに……。
「ゆすり屋」※日本初公開
監督:アカン・サタエフ
脚本:ティムール・ジャクスィリィコフ
出演:サヤト・イセムバエフ、ムラト・ビセムビン、アセリ・サガトワ、サケン・アミノフ
カザフスタン/2007年/ロシア語、カザフ語/カラー/80分/原題:Reketir
カザフスタンの新しい大衆映画を代表する監督アカン・サタエフ(「女王トミュリス 史上最強の戦士」)の出世作。ソ連解体から独立に至る変動期に拳ひとつで道を切り開いていく主人公の姿が、若者に熱狂的に支持されて大ヒットを記録。
【story】1990年代初頭、混乱する社会。幼い頃からボクシングの手ほどきを受けてきたサヤンは、有望なボクサーとして頭角を表すも、その強さを買われて悪の道に引き摺り込まれる。父親が失職し、女友達との関係もうまくいかないサヤンは、初めは軽い気持ちで仕事を引き受けるが、次第に深みにはまり……。
「南の海からの歌」※日本初公開
監督・脚本:マラト・サルル
出演:ウラジーミル・ヤボルスキー、ジャイダルベク・クングジノフ、イリーナ・アンゲイキナ、アイジャン・アイテノワ
ロシア、フランス、ドイツ、カザフスタン/2008年/ロシア語、キルギス語/カラー/84分/原題:Pesni yuzhnykh morey
第30回ナント三大陸映画祭観客賞受賞。キルギス人のマラト・サルル(「あの娘と自転車に乗って」脚本)監督作。先住民のカザフ人家族と移民のロシア人家族の愛憎劇をベースに、民族、世代、家族の対立をユーモアを交えて多層的に描く。
【story】ロシア人のイワンとカザフ人のアサンは、小さな村の隣人であり親友同士。しかし、イワンは妻マーシャが産んだ息子の外見からマーシャとアサンの浮気を疑い、両家族の関係は悪化する。10数年後、成長した息子はアサンのような馬乗りになって家を飛び出し、やがてイワンとアサンも自身のルーツを探しに旅立つ……。
「狼と羊」※日本劇場初公開
監督・脚本:シャフルバヌ・サダト
出演:セディカ、クドラット、アミナ、サハル
デンマーク、フランス、スウェーデン、アフガニスタン/2016年/ダリ語/カラー/86分/原題:Wolf and Sheep
第69回カンヌ国際映画祭監督週間アートシネマ賞受賞。アフガニスタンの若き才能、シャフルバヌ・サダトの半自伝的な長編デビュー作。昨年の本映画祭上映作「カーブルの孤児院」の前日譚で、伝統的な風習が残る山間の村が舞台。
【story】アフガニスタンの山間の村。クドラットの父が亡くなり、母は妻を2人持つ老人と再婚する。行き場のないクドラットは、呪われていると言われるよそ者の少女セディカと出会い、親しくなる。そうした中、都市部から遠く離れた村にも、不穏な国内情勢の影響が及び……。
「不屈」※日本劇場初公開
監督・脚本:ラシド・マリコフ
脚本:ケネス・カリモフ
出演:カリム・ミルハディエフ、セイドゥラ・モルダハノフ、ベクゾド・ハムラエフ、ニゴラ・カリムバエワ
ウズベキスタン/2018年/ウズベク語/カラー/78分/原題:Sabot
ウズベキスタン西部のカラカルパクスタンが舞台で、中央アジアでは珍しいアフガン帰還兵を題材にした物語。同国がアフガニスタンへの前線基地だった歴史が背景にあり、ソ連時代はタブーだったアフガン侵攻の現実が描かれる。
【story】退役軍人のサイデュラは、学校に勤め、愛犬と暮らしている。彼のもとにはアフガニスタンで命を落とした戦友の亡霊が時々現れる。息子家族も同じ町に住むが、確執があり、孫と触れ合うこともできない。ある日、自身が癌で余命わずかだと知った彼は、人生でやり残していた仕事に取りかかる……。
〈中央アジア今昔映画祭2022〉
日程:
ユーロスペース:12/10(土)~12/30(金)
フォーラム仙台:12/9(金)~12/22(木)
横浜シネマリン:12/10(土)~12/23(金)
名古屋シネマテーク:12/17(土)~12/30(金)
出町座:12/16(金)~12/22(木)
第七藝術劇場:12/24(土)~12/30(金)
元町映画館:12/17(土)~12/23(金)
横川シネマ:12/16(金)~12/22(木)
主催・配給:トレノバ パブリシティ:スリーピン
公式サイト:https://trenova.jp/centralasia2022/
文化庁「ARTS for the future! 2」補助対象事業